本研究の論文がInvestigative Ophthalmology and Visual Scienceに2022年5月号に掲載された。2022年6月より研究責任者である上野真治が弘前大学に異動となったため、マウス実験は終了となった。 本研究では、アディポネクチンの類似物質であるC1q/TNF-related protein (CTRP) 9の網膜に与える影響を解明した。研究では、Ctrp9遺伝子ノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスの網膜を電気生理学的検査、組織学的検査、RNAシーケンシング、定量的リアルタイムPCRによって調べた。その結果、最大刺激強度による錐体ERGの振幅は、8週齢のKOマウスでWTマウスに比べて40%低下していた。しかし、この錐体ERGは、8週齢から6か月齢まで低下していなかった。KOマウスの暗順応下ERGの振幅は8週齢と6か月齢の両方でWTに比較して低下していなかった。網膜の組織切片では明確な異常は見られなかったが、KOマウスの網膜フラットマウントでの錐体密度は、WTマウスの約70%に低下していた。網膜のRNAシーケンシングでは、KOマウスとWTマウスの両方でCTRP9の発現がなかった。これはCTRP9が網膜では発現せず異所的に発現して網膜に影響していることを示していた。RNAシーケンシングと定量的リアルタイムPCR解析では、錐体細胞で発現する遺伝子の転写物であるOpn1sw、Opn1mw、Gnat2、およびCnga3の転写物の発現が、KOマウスの網膜で減少していた。しかし、杆体細胞の転写物の発現は減少していなかった。これらの結果から、CTRP9は他の組織から異所性に放出され、マウスの網膜の錐体細胞数に影響を及ぼしていることが示唆された
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