研究課題/領域番号 |
19K09936
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
原 英彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 学長 (20381717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜再生 / ゼブラフィッシュ / TUDCA |
研究実績の概要 |
視覚は生活の質を維持するために重要な感覚の一つである。このため萎縮型加齢黄斑変性症や網膜色素変性症などの網膜変性疾患における視細胞の損失は、患者の生活の質を大きく低下させる。しかし現在、これらの疾患に対する治療薬は存在しない。そのため、視細胞を含む網膜細胞の再生を促す薬剤の創出が切望されている。ゼブラフィッシュなどの魚類やアフリカツメガエルなどの両生類の網膜は再生能を有しているのに対し、ヒトやマウスなどの哺乳類の網膜は再生能を持たないと考えられてきた。しかし近年、哺乳類においても障害後に網膜細胞の再生が起きる可能性を示唆する報告がなされてきた。本研究では、成体においても生理的な網膜再生が起こるゼブラフィッシュを用いて薬物による網膜再生誘導法の探索及びその方法の哺乳類への応用を目的として検討を行った。当該年度の研究実績として、胆汁酸の一種であるタウロデオキシコール酸 (Tauroursodeoxycholic acid: TUDCA) がゼブラフィッシュ網膜の細胞増殖を促進することを明らかにした。胆汁酸は哺乳類の臓器の中で、唯一成体において再生能力を有する臓器である肝臓の再生を促進する役割を担う。我々の検討ではTUDCAが針刺し傷害後の網膜再生における細胞増殖過程を促進することを発見した。TUDCAは非傷害正常網膜においては網膜外顆粒層の増殖細胞数のみを増加させた。また、TUDCAの投与により網膜における細胞周期抑制因子であるp21, p27, p53のmRNA発現が抑制されていた。これらの結果からTUDCAは網膜において細胞周期が回転している増殖細胞の増殖促進を誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究より、本研究の目的である薬理学的な網膜再生の誘導には複数の因子による複合的な作用が必要であることが示唆された。そこで該当年度では、ゼブラフィッシュの網膜再生を促進する化合物の一つとして、新たにTUDCAを同定した。TUDCAの投与により針刺し傷害後のゼブラフィッシュ網膜の再生における細胞増殖過程が促進されることを発見した。TUDCAの投与により、非傷害正常網膜においては網膜外顆粒層の増殖細胞数が増加した。また、TUDCAの投与により網膜における細胞周期抑制因子であるp21, p27, p53のmRNA発現が抑制されていた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の検討により、細胞周期を亢進させる薬物を見出した。これは哺乳類における限定された再生能力の補助的に働くものであると考えられ、幹細胞の活性化を誘導する薬物との組み合わせにより網膜再生誘導につながる可能性がある。今後の研究の推進方策としては、哺乳類における網膜再生を阻害する要因となる組織の瘢痕化、線維化について着目し、これらの薬理学的な制御方法を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 今年度は研究が順調に進行し、おおむね予想通りの成果をあげることができた。さらなる研究進展のために次年度使用予定の研究費が生じた。 (使用計画) 研究試薬の購入費及び研究内容の学会・論文発表費として使用する。
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