研究課題/領域番号 |
19K09942
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
万代 道子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 副プロジェクトリーダー (80263086)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜変性 / ES/iPS細胞由来網膜 / 視細胞移植 / シナプス形成 / 多電極アレイ |
研究実績の概要 |
ES/iPS細胞から分化した胎児期相当網膜を、視細胞変性の末期動物モデル(マウス)に移植し、ホストグラフトのシナプス形成およびその機能回復に焦点を置いた研究を進めている。これまでに2次元画像を用いてのシナプス定量解析系を立ち上げていたが、本年度はより3次元画像を用いてロバストにシナプス定量をする方法を確立した。移植後多電極アレイを用いた電気生理評価後にその評価範囲の3次元ボリューム画像を取り込み、遺伝的なレポーターを指標としてホスト双極細胞とグラフト視細胞の間のシナプスを特定、既存のソフトウェアを用いてロバストにホストグラフト間のシナプスを定量することができるようになった。電気生理の反応についてもさらに改善を行い、光応答、自発発火など神経節細胞の反応を客観的定量的に比較解析が可能となった。これらの手法を組み合わせることにより、具体的にどのようなグラフト生着部位でどの程度ホストグラフトシナプスが形成されており、どの程度の神経節細胞で光反応が見られるか、を総合的に捉えることが可能となった。また、より電気生理学的な解析を洗練することにより、次世代移植片として開発中の、双極細胞を欠失した遺伝改変株においては移植後シグナルノイズ比が上がっており、ホストの双極細胞あたりのシナプス形成をしている移植視細胞が増えていること、また結果行動検査でもより良好な結果が得られたことから、シナプス形成と電気生理学的応答が結果としての視機能改善に寄与していることが示唆された。 また、視細胞は双極細胞、水平細胞とトライアッドという3細胞間でのシナプスを形成する。移植後生着時の水平細胞の関与を調べるために、水平細胞の特異的消失を誘導するできる系統のマウスを網膜変性モデル(rd)、双極細胞レポータモデル(L7-GFP)と掛け合わせることにより4遺伝子クロスの遺伝改変マウスを掛け合わせ作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この1年で、移植後のシナプス形成、ホストの神経節細胞の反応、を実用的なレベルでロバストに総合的に捉えることが可能となり、引き続きどのような介入によりどのような機能的生着の改善が得られるかを調べていく上での基盤を作ることができた。今後はシナプス形成を促進するための試みとして、移植時の介入実験を試みていく予定である。また水平細胞の欠失を誘導するモデルマウスも準備ができてきたところで、今後はこちらを用いて移植後のホスト側の受け入れ条件などについても検討を進めていく。また、シナプスは免疫組織学的評価を基準に行っているが、その裏付け実験として免疫染色のシナプス像と電顕シナプス像を対比させる試みも進めている。
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今後の研究の推進方策 |
移植時にいくつかの生着改善が期待できるような因子を添加して、生着、シナプス、電気生理を総合的に用いて生着の改善を評価する。電気生理の刺激について引き続き工夫する。水平細胞欠失モデルを用いて移植後のシナプス形成や機能の評価を進める。電顕と免疫染色を照合していくことにより、移植後形成されるシナプスの性質について詳細を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿中の論文があり、まだ査読状態であるため、その出版関連費(校正代含む)として翌年度に使用予定
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