研究課題/領域番号 |
19K09950
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
岡 千緒 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30263445)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / HtrA1 / ノックアウトマウス / プロテアーゼの基質 / Clusterin |
研究実績の概要 |
#1.得られている14個の候補蛋白質が基質として確からしいかどうか評価する。 基質候補のたんぱく質の一部については、野生型(WT)、HtrA1ノックアウト(KO)、HtrA3 KO、HtrA1/HtrA3 DKOそれぞれの遺伝型のマウスの大動脈、胎盤、網膜組織から蛋白を抽出し基質候補蛋白質に対する抗体でのイムノブロットにより蛋白の発現量を確認した。また、ヒト網膜色素細胞(RPE)株のARPE19細胞、HEK293T細胞、Hela細胞に野生型または、プロテアーゼ欠失変異型のHtrA1の発現ベクターをトランスフェクションし、細胞溶解液および細胞上清について候補蛋白質に対する抗体を用いてイムノブロットしてヒトの細胞においても基質となりうるかを検証した。その結果、alpha-synuclein(ASNC)が興味深い動態を示したため、今後はClusterin と共にASNCについても解析を行っていく。 #2.AMDの病態形成メカニズムにおいて基質蛋白質の機能を解析できる系を確立する。 マウスのRPE細胞の初代培養系が確立できた。また、ARPE19細胞においてtet-on システムにより野生型HtrA1またはS328A変異型HtrA1を過剰発現できる細胞株を作成した。 #3.現時点で基質として確からしいと考えられているClusterin についての機能解析を進める。 眼と腎臓の組織においてTritonX-100可溶性のClusterinの発現量に差はみられなかったがTritonX-100不溶性のClusterinはHtrA1 KOマウスでWTマウスに比べ増加しており、HtrA1はClusterinの分解だけでなく、リフォールディングにも関わる可能性が示唆された。生化学的解析が容易な腎臓でより詳細に解析すると同時に、この現象がARPE19細胞でも見られるか検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
#1.得られている14個の候補蛋白質が基質として確からしいかどうか評価する。 基質候補14個のうち良い抗体が入手でき確認できたもののうち、新たにASNCを基質候補として今後の解析対象とした。 #2.AMDの病態形成メカニズムにおいて基質蛋白質の機能を解析できる系を確立する。 siRNAによるノックダウンを試みたが効果が不安定であったため米国から届いたcrispase/cas9によるゲノム編集のためのベクターを使用してHtrA1ノックアウトした細胞株を樹立するための発現ベクターを構築中である。また同様に米国から届いたベクターを用いてtet-on システムにより野生型HtrA1またはS328A変異型HtrA1を過剰発現できるARPE19細胞胞株を樹立した。マウスのRPE細胞の初代培養系が確立できたので、解析ツールがほぼそろった。 #3.現時点で基質として確からしいと考えられているClusterin についての機能解析を進める。 HtrA1がClusterinのリフォールディングに関わっておりシャペロンとしての機能を持つ可能性が出てきた。また、ストレス下ではClusterinが分泌経路から細胞質内に輸送されオートファジーの促進に関わるが、HtrA1はClusterinに対するシャペロン活性を介してオートファジーの制御に機能している可能性が高まった。以上の理由により、本研究課題の進捗状況を(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「#1.得られている14個の候補蛋白質が基質として確からしいかどうか評価する」について、ASNCが新たな基質候補として解析対象となったのでClusterinと同様の手法で解析を進めると同時にASNCとClusterinの相互作用におけるHtrA1の機能解析も行い、Proteostasisの観点からの解析に発展させていく。 「#2.AMDの病態形成メカニズムにおいて基質蛋白質の機能を解析できる系を確立する」および「#3.現時点で基質として確からしいと考えられているClusterin についての機能解析を進める」について、HtrA1がClusterinのリフォールディングに関わっておりARPE19細胞において、ストレス下ではClusterinの細胞質輸送を促進することでオートファジーの促進に寄与している可能性が高まった。今後はこの機能がAMDの病態形成にどのように関わっているかについて、これまでに樹立したARPE19細胞胞株、マウスのRPE細胞の初代培養系において解析する。それと同時に新たにSodium iodate投与によるマウスAMDモデルをWTマウスおよびHtrA1 KOにおいて誘導し、AMDの病態形成におけるClusterinとオートファジーの機能について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより学会参加旅費が生じなかったため。 また、論文投稿の遅れにより投稿費が生じなかったため。 令和3年度にデータの再現性を確認した後、論文投稿のための費用として使用する予定である。
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