近視はアジア圏を中心に急速に広がっているが、その発症・進行の分子機序および効果的な予防方法が存在しない。現在までに唯一エビデンスレベルが高い予防法として屋外活動あるが、申請者は太陽光に含まれる360nm~400nm領域の光(バイオレットライト)が近視進行抑制へ関与を示唆する知見を得ており、その近視進行抑制効果について検証した。申請者は夏、快晴、北向きの屋外太陽光に含まれるVLのエネルギーを基準にし、レンズ誘導近視マウスへの照射実験を行った結果、VLの照射はマウス近視モデルの近視進行を完全に抑えることが確認された。また、自然の太陽光の中にに豊富に存在する赤、緑、青色の光をVLと同じエネルギーでマウスに照射し、近視進行抑制効果を比較した結果、VLの近視抑制効果が一番強いことが確認された。以上により、屋外環境光に存在するVLはマウスの近視進行を抑制することができ、その抑制効果は波長特異的であることが証明された。 また、近視は眼球の前後方向の長さである眼軸長が伸長することで生じるが、この眼球形態の変化に関して申請者は強膜に着目し病理学的組織学的な検討を詳細に進めたところ、近視強膜では、強膜線維芽細胞の粗面小胞体が膨張していることを見出した。これは小胞体ストレスが生じている際の一つの傍証であることから、近視強膜では小胞体ストレスが生じていること、それば眼軸伸長に関わっている可能性が考えられた。
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