加齢黄斑変性や網膜色素変性などの網膜変性疾患は視細胞の細胞死(視細胞死)を生じ失明に直結する難治性疾患である。視細胞死を悪化、促進させる大きな要因として網膜内の炎症が挙げられる。炎症を抑制することは視細胞死の進行を抑制できることが予想されるが、どのようにして炎症を抑制すればいいのかは不明である。 申請者が着目をしているのは「ドラッグ・リポジショニング」である。ドラッグ・リポジショニングとはすでに使用実績のある薬剤を本来の対象疾患だけではなく別の疾患への薬効を検討する既存薬の再開発を意味する。本年度は、前年度に引き続きミノサイクリンの網膜変性への治療応用を検討した。ミノサイクリンは、テトラサイクリン系抗生物質でありながら、マイクログリア抑制作用を示し網膜変性への治療効果が期待されている薬剤である。網膜変性を自然発症し、Ccr2とCx3cr1を蛍光蛋白により可視化したMertk-/-Cx3cr1GFP/-Ccr2RFP/-マウスにミノサイクリンを投与した結果、同剤は網膜内のCcr2発現を抑制し、網膜変性への治療効果を示した。同結果は現在論文投稿中であり、間もなくアクセプトされる予定である。また、従来中心性漿液性網脈絡膜症に対する治療薬として頻用されているヨウ素レシチンをMertk-/-Cx3cr1GFP/-Ccr2RFP/-マウスに投与し、網膜変性への治療効果を検討した。今研究結果は第125回日本眼科学会総会で発表する予定である。
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