研究課題/領域番号 |
19K09964
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 孝太 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50732327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 緑内障 / 網膜神経節細胞 / メタボローム解析 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、レーザーマイクロダイセクションの予備検討を実施した。まず、正常マウスの網膜凍結切片を作製し、標的となる網膜神経節細胞が存在する神経節細胞層(GCL)をレーザーで切り落としマイクロチューブに回収した。GCL片を2-20個程度回収し、目的の代謝物をLC/MSで測定したが、GCL片の数を増やしても目的の代謝物群を定量的に解析することが困難であることが判明した。そのため、レーザーマイクロダイセクションの代替方法としてイメージングMSによる代謝物測定に方針転換した。前回の科研費研究で取得したマウス視神経挫滅前後の網膜標本を用いたイメージングMSデータを再解析し、主成分分析やloading plotにより視神経挫滅マウス網膜GCLにおける同定可能な変動代謝物を複数同定した。一方、本データの再解析では取得困難な目的代謝物群の存在が判明したため、イメージングMSの手法について再検討も実施した。その結果、感度や安定性の異なる複数の手法が判明したため、本研究の目的に合致したイメージングMSの手法について現在予備検討を進めている。また、視神経挫滅後のマウス網膜をサンプリングし、昨年度に確立したFACS手法(BD Aria2, Thy1.2陽性)にて網膜神経節細胞を単離し、RNA抽出試薬にダイレクトソートによりサンプルを回収した。その後RNAを抽出しTapestation(アジレント社)でクオリティチェックをしたのち、次世代シーケンサーでRNA-seqを実施し網羅的な遺伝子発現データを取得した。解糖系やクエン酸回路、グルタチオン代謝や脂質代謝などに関わる遺伝子群の発現パターンを中心に比較検討した結果、視神経挫滅後のマウス網膜神経節細胞において有意な発現変動が見られた遺伝子を複数確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり疾患モデル動物における網膜神経節細胞の代謝物解析ならびに網羅的遺伝子発現データの取得が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のRNA-seqにより取得した網羅的な遺伝子発現データを解析し、標的遺伝子群の発現変動パターンを確認する。加えて、イメージングMSのデータ取得条件を確定させ疾患モデルである視神経挫滅時における代謝物変動パターンデータを取得する。上述のトランスクリプトームおよびメタボロームのデータセットが揃った後、統合解析により視神経軸索挫滅モデルマウスのRGC死において変動する代謝産物と、その調節に関わる代謝酵素群をKEGG pathway上にマッピングする。上述の解析でプロファイルされた代謝異常とRGC死の関連を検討する。標的遺伝子を同定し、CRISPR/Cas9によるゲノム編集によりRGCに特異的なレドックス反応の活性化や関連候補因子群の過剰発現による代謝物リプログラミングを試み、その神経保護効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
統合解析による神経保護治療標的遺伝子探索とゲノム編集などによる機能解析評価のため、次年度も研究費が必要となる。具体的には、疾患モデルマウスの網膜神経節細胞をFACS単離、RNA-seq、イメージングMS実験に主に研究費が必要となる予定である。
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