研究課題
緑内障眼での眼圧上昇は主流出路流出抵抗増大によるとされ、隅角線維柱帯(TM)の線維化、細胞外マトリックス(ECM)の異常沈着、バリア機能亢進等に房水中の生理活性物質の関与が指摘されている。特に房水中のサイトカインのなかでも、TGFβ2は開放隅角緑内障(POAG)での房水中高値が報告されているが、非常な眼圧高値を示す続発緑内障(SOAG)や落屑症候群(XFG)では低値であり、これらの病型で眼圧上昇に関わる因子は不明であった。そこで我々は、前年度迄の経過として線維化に関与するリゾフォスファチジン酸(LPA)と産生酵素オートタキシン(ATX)に着目し、各緑内障病型を含む多数例の房水解析を行った結果、緑内障眼でLPA、ATXが有意に上昇、特にSOAG、XFGで高値、眼圧と有意な相関を示すことを見出した。また、ヒト隅角組織および培養ヒト線維柱帯細胞(HTMC)の解析から、緑内障眼でTMにATXの発現上昇がみられ、ステロイド刺激によるHTMCでのATX発現上昇が線維化に関与し、ROCK阻害薬で抑制されることを明らかにした。そこからさらに各緑内障病型におけるTGFβ2とATXのバランスを比較検討し、ATX-TGFβ2バランスが緑内障病型診断に有用であることを明らかにした。続発緑内障のなかでもサイトメガロウイルス(CMV)陽性症例では難治性緑内障をきたしやすいこをが指摘されているが、ポスナーシュロスマン症候群(PSS)におけるCMV陽性症例で緑内障併発症例で有意にATX高値、眼圧上昇と相関を認めたことを報告した。また、PSSにおける角膜内皮にTNF-NFκが関与していること、ROCK阻害薬で抑制されることを明らかにした。加えて最終年度は様々な緑内障治療薬や阻害薬がTGFβ2やATX-LPA経路等による緑内障病態に対する作用を解析し、報告することができた。
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すべて 雑誌論文 (21件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
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