研究課題/領域番号 |
19K09967
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中村 浩幸 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10211434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚神経 / 大脳皮質 / 外側膝状体 / 松果体 / マカクザル / Long-Evans ラット / 神経回路 / 視蓋前域 |
研究実績の概要 |
アカゲザル1頭およびラット(lar Long-Evans)2頭を用いた。 アカゲザルの脳を用いて、外側膝状体―視覚連合野皮質投射の存在の有無とその投射様式を検討した。脳MRI画像を3次元再構築し、頭頂間溝深部に存在するV3A野の位置を確認した。回復期間の後トレーサー注入実験を行った。塩酸ケタミンと塩酸メデトミジンにて導入し、1.5%イソフルランにて麻酔した。麻酔中は保温パッドで体温維持、ソリタT3G点滴補液、末梢血中酸素濃度・心電図・血圧・呼吸・直腸温をモニタした。頭部を脳定位固定装置に固定して開頭し、微小ガラスピペットを用いて、微量の順行性・逆行性軸索トレーサー20%ビオチン化デキストランアミン、逆行性蛍光軸索トレーサー2%ファーストブルーを、頭頂葉視覚連合野皮質V3A野に圧注入した。2週間の生存期間の後、塩酸ケタミンと塩酸メデトミジンにて導入し、ペントバルビタール深麻酔下にて、脳を4%パラフォルムアルデヒド還流固定した。前額断凍結連続切片を作製し、軸索トレーサーで同側の外側膝状体に逆行性に標識された神経細胞体の分布を検討した。V3A野へ投射する逆行性標識神経細胞は、外側膝状体極小細胞層1‐4層ならびに外側膝状体腹側のS層に分布していた。 ラットの脳を用いて松果体への中枢神経投射の存在を検討した。研究計画ではダークアグーチラットDAを使用する予定であったが、より視覚研究に適しているロングエバンスラットlar Long-Evansに系統を変更して実験を実施した。3種混合麻酔(塩酸メデトミジン0.6mg/kg+ミダゾラム8mg/kg+酒石酸ブトルファノール5mg/kg)にて麻酔し、脳定位固定装置に頭部を固定した。20%バイオサイチンを充填した微小ガラスピペットを用いて、微量圧注入した。ペントバルビタール80mg/kg深麻酔下で還流固定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体調不良の為、予定通り研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
アカゲザルおよびラットを用いた実験を継続する。 アカゲザルの視覚連合野皮質へ、逆行性トレーサー微量注入した実験を追加し、論文発表に必要なデータ数を確保する。外側膝状体の層間に存在する極小細胞層から頭頂葉視覚連合野皮質V3A野への投射様式を確認する。同時に、側頭葉視覚連合野皮質V4野への極小細胞層の投射様式との比較を行い、軸索分枝による同一細胞から頭頂葉視覚連合野皮質V3A野と側頭葉視覚連合野皮質V4野への分枝投射の有無を調べる。データを解析し、学会発表・論文投稿用の図を作成する。 ラット(lar Long-Evans)を用いて松果体への中枢神経投射の存在を明らかにする。手綱交連から松果体へ入力する大量の神経線維の起始部位はほとんど報告されていない。この線維の起始部位を解明する。バイオサイチンならびにビオチン化デキストランアミンを用いて、標識された松果体投射神経細胞の軸索を松果体内分泌細胞までトレースする。今年度中に学会発表および論文投稿可能な症例数を達成する。このデータは極めて重要であり、rapid communicationあるいはletters to the editorにて公表する。現在は、自律神経系の末梢神経節細胞が中枢神経(松果体)へ直接投射して脳の機能を神経回路を介して制御しているという誤った概念が、遺伝子実験者を中心に拡散され続けている。正しい神経投射を記載することは、神経解剖学を専攻する研究者の使命と考える。
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