研究課題/領域番号 |
19K09968
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤木 忠道 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30580112)
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研究分担者 |
池田 華子 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20372162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前眼部OCTA / 緑内障点眼 / 房水流出主経路 |
研究実績の概要 |
房水流出主経路は線維柱帯からシュレム管、集合管を経て、強膜内静脈叢あるいは房水静脈を介して上強膜静脈へと至る。点眼治療や低侵襲な緑内障手術である流出路再建術の眼圧下降効果は個体差が大きく、治療効果をあらかじめ予測することは困難である。シュレム管以降の房水流出抵抗が治療効果に影響すると考えられるが、これまで生体下で房水流出機能を非侵襲的に評価する方法は存在しなかった。以前研究代表者は世界に先駆けて、光干渉断層血管造影(Optical coherence tomography angiography: OCTA)を用いた房水流出主経路に関わる血流の画像化を報告した。本研究ではこの方法を用いて、緑内障治療効果予測に活用できる非侵襲的検査法の確立を目的とする。 2019年度までに、点眼治療中の緑内障眼を対象としてOCTA血流画像の表層血管密度が緑内障点眼の影響を受けていること、深層血管密度が眼圧値と正の相関を示すことを明らかにした。2020年度には、健常被験者を対象にリパスジル点眼とビマトプロスト点眼の点眼前、点眼15分後、点眼2時間後でのOCTA画像変化の解析を行った。リパスジルは房水流出主経路の房水流出を促進し、ビマトプロストは房水流出副経路の房水流出を促進することで眼圧を下降させる点眼薬である。リパスジル点眼15分後には表層血管密度と深層血管密度の両方が上昇した(点眼前:深層13.1%; 表層28.5%) (点眼15分後:深層19.9%; 表層37.3%)が、2時間後には深層血管密度のみが有意な上昇を認めた(深層14.8%; 表層31.6%)。ビマトプロスト点眼後には表層血管密度が上昇したが、深層血管密度は有意な変化を認めなかった。多変量解析の結果、点眼前の深層血管密度はリパスジルによる眼圧下降効果に有意な相関を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
房水流出主経路に作用する点眼薬であるリパスジルの眼圧下降効果が、前眼部OCTAによる深層血管密度と有意に関係していたことから、流出路再建術による眼圧下降効果と前眼部OCTA画像の間にも相関関係がある可能性があり、術前OCTA画像と手術成績との関係を検討中である。手術症例のエントリーはすでに終了しており、現在解析を進めている段階である。また、流出路再建術前後でのOCTA画像変化についても、流出路再建術前と術後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月後の画像取得を終了しており、画像解析を現在遂行中である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究の部分については概ね予定通り進行しており、2021年度中には予定していた解析を終了できる見込みである。一方、動物実験の部分についてはCOVID-19の影響もあって予定より遅れが見込まれている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響で旅費が想定より少なかった。最終年度である次年度には成果報告に関わる費用を多く要する可能性が高く、COVID19の状況次第では旅費も必要になる可能性がある。
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