本研究では、緑内障や難治性の視神経疾患の新たな神経保護的治療を目指して、申請者がこれまで行ってきた網膜視神経疾患に対する電気刺激による神経保護効果に関する基礎及び臨床研究をさらに発展させ、①慢性刺激を可能にする埋込み型電極の開発および神経保護効果の検討や②慢性電気刺激と神経栄養因子などの神経保護作用薬との併用効果の検討、③それらのメカニズムの解明を行い、難治性網膜視神経疾患に対する電気刺激治療の新たな方法の確立を目指すことを目的に研究を行った。 ①慢性刺激を可能にする埋め込み型電極と電気刺激システムについては、ラットの視神経切断モデルを用いて、検討を行い、最長4週間まで慢性刺激を継続することを可能にし、神経保護効果が4週間後でも持続することを証明した。 ②慢性電気刺激と神経栄養因子による神経保護効果との併用効果については、神経栄養因子を持続的に投与するシステムの開発をまず行った。結果、慢性投与システムが2週間程度機能することは確認できたが、4週間は持続できなかった。一方、慢性電気刺激と神経栄養因子の投与でさらに神経保護効果が高まることを見出し、4週間後も持続した。 ③神経保護のメカニズムの解明についてはラマン分光法などの新しい手法を用いて検討し、新たな神経保護のターゲットとしてグルコースの可能性を見出したが詳細は詰め切れず、今後の検討課題となった。今回の研究によって、慢性刺激は、一回の電気刺激より神経保護効果が持続することがわかり、今後の臨床応用につながる可能性を示した。
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