現在の日本の失明原因の多くを占める糖尿病網膜症 (DR) と加齢黄斑変性 (AMD) において、現在の治療の第一選択である抗血管内皮増殖因子 (VEGF) 薬硝子体注射で治療ができない症例が存在する。こういった症例において、抗VEGF薬を病変により近い部位に投与する網膜下注射することで、より低用量で、より効果のある治療ができるのではないかと申請者は考えた。現在、網膜下注射で使われる薬剤の毒性、生理活性に与える影響については十分な検討が行われていない。そこで今回、抗VEGF薬が網膜色素 (RPE) 細胞に与える影響の研究を行った。primary RPEに濃度を変えた抗VEGF薬を投与し、48時間後に検討を行った。抗VEGF薬が1/16および1/64倍希釈した抗VEGF薬 (ベバシズマブ、アフリベルセプト) では、対照群と比較して細胞の有意な障害を認めなかった。 AMDやDRで発症する黄斑下出血に対する治療 (出血移動術) 時に網膜下に投与する組織プラスミノーゲン活性化因子 (tPA) について、その毒性が濃度および時間依存的に増悪することを以前の科研で報告しており、これについて追加検討を行った。tPAの濃度が濃くなるほど、また暴露時間が長くなるほど、経皮電気抵抗が低下することを認めた。またtPAによる網膜毒性によりRPE細胞がどのような細胞死をしているのかについて検討をした。human fetal RPE細胞にtPAの毒性の主成分であるアルギニンを投与して各種の細胞染色を行ったところ、ネクローシスによる細胞死を示す結果であった。
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