研究課題/領域番号 |
19K09971
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
池田 康博 宮崎大学, 医学部, 教授 (20380389)
|
研究分担者 |
西口 康二 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30447825)
下澤 律浩 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50300786)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 疾患モデル動物 / カニクイザル / 網膜色素変性 |
研究実績の概要 |
網膜色素変性は、現時点で有効な治療法の確立されていない眼科領域の難病で、我が国の中途失明原因の第2位である。本研究では、網膜色素変性の治療法開発を目指し、疾患モデル動物として、よりヒトに近いカニクイザルでの繁殖コロニー構築するための準備を目的とする。これまでに我々は、常染色体劣性遺伝形式で網膜色素変性を自然発症するカニクイザルを2頭(17歳雌、6歳雄)を同定し、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター(つくば市)にて飼育している。本年度は、これまでに発症の確認された個体の近親にあたる個体の眼底検査を実施した。その中から網膜色素変性が疑われる個体(4頭)に対して網膜電図測定を実施したところ、1頭(2歳雄)は杆体応答ならびに錐体応答がいずれも消失型であり、網膜色素変性を有する発症個体であると診断された。また、発症個体だけでなく、ヘテロの個体も新たに数頭同定できた。 また、それぞれの新たな個体より、ゲノムDNAを採取し、来年度実施予定の全ゲノムシーケンスによる新たな病因遺伝子解析の準備を進めている。 さらに、病因遺伝子を保因していると考えられる個体を両親や兄弟などの近親交配を避けて優先的に交配を行った。17歳雌は、ヘテロ雄との交配により仔を出産した。その仔の眼底検査等は既に実施済みで、現時点で病気を発症していないことが確認された。また、6歳雄が性成熟に達し、交配が可能であることも確認した。今後は、6歳雄とヘテロ雌個体を中心に、交配を薦める予定となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに我々は、常染色体劣性遺伝形式で網膜色素変性を自然発症するカニクイザルを2頭(個体A<17歳雌>、個体B<6歳雄>)同定し、飼育している。まず、本年度はこれらの発症個体の近親にあたる個体を中心に眼底検査を新たに実施した。さらに、その中から網膜色素変性が疑われる個体(4頭)に対して網膜電図測定を実施したところ、1頭(個体C<2歳雄>)は杆体応答ならびに錐体応答がいずれも消失型であり、網膜色素変性を有する発症個体であると診断された。個体Cは、個体Bの異母兄弟であった。これまでの結果より、発症個体だけでなく、病因遺伝子を有するヘテロの個体が新たに数頭同定された(テーマ1)。 また、来年度実施する予定である全ゲノムシーケンスによる新たな病因遺伝子解析に向け、これらの個体から血液を採取し、ゲノムDNAを抽出した(テーマ2)。 テーマ3として、家系解析から病因遺伝子を保因していると考えられる個体を両親や兄弟などの近親交配を避けて優先的に交配を行った。個体Aは、ヘテロ雄との交配により、2019年8月に出産した。仔の眼底検査等は既に実施済みで、現時点で病気を発症していないことが確認された。また、個体Bが性成熟に達し、交配が可能であることも確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
テーマ1として、新たに出生した個体を中心に、眼底検査を実施する。眼底検査にて異常が疑われる個体については、網膜電図を測定し診断を確定する。 テーマ2として、全ゲノムシーケンスによる新たな病因遺伝子解析を実施するが、有望な候補となる新規遺伝子や既知の網膜色素変性関連遺伝子にミスセンス変異が見つかった場合は、病気との関連性を証明するために遺伝子の発現解析や機能解析の実験を行う。 テーマ3として、引き続き交配を進めるが、個体Aと個体Bの交配も検討する。さらに、人工授精、受精卵の作出、胚移植などの技術に関する検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
個体の眼底検査や網膜電図測定のために、研究代表者がカニクイザル飼育施設(つくば市)に複数回訪問予定であったが、現地スタッフのみで検査が実施できたため、その旅費が減額された。また、本年度より開始予定であった全ゲノムシーケンスによる新たな病因遺伝子解析が来年度に延期されたため、そのために使用予定であった委託費を来年度分として使用することを計画している。
|