研究課題
研究計画に沿って研究を進めた。海外との共同研究では、モンゴル国でのベーチェット病多施設共同研究が予定を上回る順調な成果を挙げた。日本人より発症年齢が若く、平均 22.2 歳、視力予後不良者は日本など他の諸国と同様に男性患者で不良であった。4主症状の発現頻度は日本などとほぼ同様であったが、同国の特徴として鼻粘膜潰瘍が頻繁に見られた(55.4%)。同症状はこれまで注目されていない新たな知見である。これがモンゴル人患者の特徴なのか、厳しい自然環境など外的環境に関係するのか、さらなる調査を続ける予定である。臨床サンプルの収集も順調に進み、解析が始まっている。中東のヨルダン・ハシミテ王国を訪問し、患者診察と臨床サンプルの収集を開始した。また同地で医師向けの特別講演や医学生向け特別講義を行い、同時に同国のリウマチ科医会の協力のもとで同国ベーチェット病患者会、ヨルダン科学技術大学、プリンセス・ハヤ研究所などと共同研究を開始した。臨床データの収集に続いて、臨床検体の収集も順調に進んでいる。日本人を対象にした研究では、全国多施設共同研究に参加し、HLA-B51 遺伝子が特に眼症状の危険因子であること、しかし外陰部潰瘍や腸管症状とは逆相関することが明らかになった。口腔内常在菌の解析では表面抗原に対する血液中の自己抗体の検出と解析が進んでいる。ベーチェット病患者血清中で非常に高値、他のぶどう膜炎患者ではいずれも低値であったため診断的価値が高いと推測されるが、眼症状のない患者での検討は次年度以降の課題として残っている。
2: おおむね順調に進展している
国内では日本人患者での HLA 遺伝子と臨床像の大規模検討の結果を英文原著で発表し、順調に進んだ。2019年中は当初計画を上回るペースで順調に進んでいたが、2020年に入ってから新型コロナウイルス感染拡大による診療制限の影響で、患者検体の収集は急激にペースダウンしている。海外との共同研究でも、2019年中は現地の訪問・診療・臨床データおよび検体採取が、東アジア諸国や中東のヨルダン・ハシミテ王国などと順調に進んだが、2020年に入ってから新型コロナウイルス感染症拡大による輸送網の縮小と各研究機関の閉鎖により、一時的に困難になっている。さらに世界規模での検査試薬の需要増と生産量の縮小により、特に PCR など遺伝子検査の試薬の入荷が途絶えている。ただし、幸いここまでで解析がある程度可能な症例数には達しており、試薬類も世界的な生産態勢が回復するまでは備蓄分で可能な限り対応している。現在、当大学の研究施設はロックダウン措置がとられており、感染が終息に向かって緊急事態宣言が解除され次第、実験を再開する予定である。
研究計画に従って、海外研究機関と共同で収集した検体で患者の遺伝子と口腔内細菌叢の遺伝子解析を進める。日本人でも患者から血液と唾液などの臨床検体の収集をさらに進め、試薬類の供給が再開した部分から検討を行う。具体的には口腔内常在菌表面抗原に対する自己抗体の測定が比較的早く進む可能性がある。次いで、口腔内細菌叢の検討が比較的早い時期に実行出来る可能があると予想している。いずれにしても新型コロナウイルス感染症拡大の制御、それによる大学研究室のロックダウン解除、試薬類の供給など産業活動が再開すれば、再び順調に進められると考えている。
研究計画に沿って、国内外で研究を進めた。ほぼ計画通りに使用してきたが、年度後半に新型コロナウイルス感染症拡大による世界的な産業活動停止と輸送網縮小により、予定していた消耗品類など物品の受注・発注が一部で停止していること、同様に検体の採取・輸送が滞っていることが使用額減少分の主要要因である。研究費の使用が一時的に後ろへシフトしているだけであり、感染がある程度制御できた時点で計画通りに進むと考えている。
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