研究実績の概要 |
本研究では、網膜色素変性症患者由来iPS細胞とそのノックインラインを用いて、視細胞を選択的に標識し、分化した網膜細胞を比較することで細胞死の抑制を試みる。(1)網膜視細胞の遺伝子発現解析:本研究の視細胞の蛍光タンパク質標識により、FACS法を適用し、視細胞の純化をすることができる。これまでに、Rhodopisin, RP1, RP9, PRPF31, mtDNA(A3243G), CEP290のそれぞれに遺伝子変異のある疾患iPS細胞からレポーターノックインiPS細胞ラインを樹立することができた。特にCEP290変異でスプライシングを制御する治療を開発している(未発表)。また、この計画が派生して、中心視野を担う黄斑分化の作用機序を調べるプロジェクトを開始した(先進ゲノム支援採択)。(2)網膜変性疾患細胞の代謝物解析:いくつかの疾患iPS細胞を用いて、質量分析システムを使った代謝解析を行った。特に、ミトコンドリアDNA変異(A3243G)のあるミトコンドリア病疾患iPS細胞(MELAS-iPS細胞)および分化した網膜色素上皮細胞において、酸化ストレスが活性化されており、硫化アミノ酸の一種であるタウリンを添加することによりストレスが一部解消され表現型が改善されることを示すことができた(Homma K et al., Redox Biol. 2021)。(3)網膜色素変性の細胞死抑制の薬剤スクリーニング:本研究では特にミトコンドリアに障害のあるMELAS-iPS細胞を用いることによって、生細胞を蛍光標識で確認し、グルコース取り込みを阻害することでストレスをかけた時の生存率について、既存薬ライブラリーを用いたノンターゲットのスクリーニングを行った。この結果、いくつかの効果的な薬剤を同定することができた。現在、これらの救済メカニズムについて解析中である(未発表)。
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