フックス角膜内皮変性症とは角膜内皮細胞の早老症とも言われる疾患で、進行により角膜移植術を必要とする主要な原疾患である。本疾患の病因としては酸化ストレスなどに対する過剰応答に伴う細胞変性、細胞死が知られているが、既存の研究は不死化した細胞を用いており細胞死のアッセイが困難であった。当該疾患 iPS 細胞を樹立し、角膜内皮細胞の誘導にも成功してきた。本年度は、第一Fuchs角膜内皮変性症患者iPS由来誘導細胞を用いた疾患モデリングの評価系としての適性をbulk RNAseqを用いて解析を実施した。ENCODEプロジェクトで用いられている解析パイプラインを用いて遺伝子発現定量解析、主成分分析、ヒートマップでの可視化を行った。既に樹立している健常人株、日本人株、欧米人株由来の誘導内皮細胞における発現変動遺伝子を解析し、既知の病態生理に関連する分子を確認した為疾患モデルとしての適性を確認した。第二にドラッグリポジショニングを目的としたFuchs角膜内皮変性症患者iPS由来誘導細胞を用いた疾患モデリングとして、酸化ストレス負荷で細胞死を短時間で誘導し、生細胞(Calcein)染色および死細胞(PI)での評価系を確立した。各種ストレスモデルおよびそれらのレスキューできる至適条件を96 well plateを用いた解析方法で陽性対照として実施する工程で条件設定などの数か月の微調整、追加の予備検討を必要とした。本学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門から供与を受けた1200種の薬剤ライブラリを提供頂いてアッセイに着手し、薬効のある化合物をスクリーニングを目下実施している。今後としてスクリーニングが完了したらリード化合物を知財化し、新たな薬物治療法として創薬戦略を検討する。
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