研究課題/領域番号 |
19K09981
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
後藤 浩 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10201500)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
臼井 嘉彦 東京医科大学, 医学部, 准教授 (50408142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 眼部悪性腫瘍 / 眼窩リンパ増殖性疾患 / 眼窩MALTリンパ腫 / IgG4関連眼疾患 / メタボローム |
研究実績の概要 |
IgG4関連眼疾患と眼窩MALTリンパ腫内で起きている代謝異常から新規バイオマーカーを創出する目的のために、それぞれの生検組織近傍の脂肪組織検体とともに採取し、これらの組織検体間の代謝濃度の違いを検討した。クラスター解析により組織および血清の代謝プロファイルを俯瞰すると、生検組織においてはそれぞれのリンパ増殖性疾患と脂肪組織には明確な代謝プロファイルの違いがみられた。一方、組織代謝マップにおいては、眼窩MALTリンパ腫では解糖系とTCAサイクルに属する代謝物が上昇し、IgG4関連眼疾患ではポリアミンが上昇していた。がん細胞はワールブルグ効果として知られるように、グルコースを大量に取り込み消費する。眼窩MALTリンパ腫ではIgG4関連眼疾患よりもグルコース代謝や解糖系に属する代謝物が上昇しているのは理にかなっている。両疾患を鑑別するためのバイオマーカーとしては、組織代謝物であるスペルミンのAUCが0.89と識別能が最も高かった。しかし、血清代謝物では2-ヒドロキシグルタル酸のAUCが 0.71となり、識別能は高くなかった。さらに、IgG4関連眼疾患と眼窩MALTリンパ腫の比較において、15の代謝物に有意な差がみられた。これらの識別能力が高い組織代謝物をランダムフォレストで選別し、お互いが独立に変動する代謝物をステップワイズ変数選択した。さらに、これらの代謝物を多重ロジスティック解析モデルで組み合わせた上で、その識別能力を評価した結果、最終的に5種類(スペルミン、グリコレート、ウリジン、マレート、N1,N12-ジアセチルスペルミン)の組み合わせがAUC0.98と、最も高い識別能力を示した。このように複数の代謝物を同時に測定できる利点を活かせば、従来の単一マーカーと比較して高精度な疾患識別や、患者ごとの個別化の指標を作ることができる可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、眼窩悪性リンパ腫におけるメタボローム研究結果が英文誌(Invest Ophthalmol Vis Sci)にアクセプトされたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、眼内リンパ腫におけるメタボローム解析を継続中である。 データは徐々に蓄積中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定より試薬などの納入が遅れてしまったため。次年度に引き続き使用する予定である。
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