研究課題/領域番号 |
19K09987
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
吉田 武史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, ジョイントリサーチ講座准教授 (30451941)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚アレスチン / 近視 / 網膜色素上皮 / 視細胞 |
研究実績の概要 |
近年日本での近視患者は人口の 6 割に達し社会問題になっている。近視の本態は眼球の延長(眼軸延長)であり、過去の研究から網膜内に近視発症の最初のトリガーがあるとされているものの原因分子は確定されていない。 当研究者は光受容器である網膜視細胞と網膜色素上皮(RPE)との間に存在する視覚サイクルカスケード反応に関与する分子が近視発症に関わっていると考えており、視覚サイクルに関与する多くの分子の中から原因分子を同定し、全世界で爆発的に増加する近視患者全員に適応となる治療法を開発することが研究の目的である。今回我々は視覚サイクルに関与する数多くの分子の中から網膜に特異性が高く、視覚物質であるロドプシンの活性化に関与する分子である視覚アレスチン(Arr1)に着目している。 初年度の研究実績:視覚アレスチン(Arr1)発現の機能解析:1 RPE 細胞に Arr1 が取り込まれる機序の確立を行った。マウスとラットに光刺激を与えると、網膜の視細胞にdominantに発現するはずの視覚アレスチンが網膜色素上皮(RPE)に取り込まれることを解明した。光刺激を与えない場合にはRPEへのArr1取り込みは認められなかったことから、光刺激はArr1の網膜ないの胴体に大きく関わっていることが明らかになった。 さらに、シート状に培養したマウスRPE 細胞に遺伝子導入でのArr1強制発現による細胞内遺伝子発現変化を解析した。培養RPE細胞に Arr1 遺伝子を組み込んだウィルスベクターを導入、Arr1 を強制発現させた。強制発現を確認後、細胞より遺伝子を抽出、Arr1発現により生じた遺伝子変化について現在解析中である。これまでにTGF-familyの遺伝子発現変化が明らかになっており、他の分子についても解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまで、何の問題もなく順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果としてはほぼ達成しており順調である。 今年度は、細胞実験の続きとして視覚アレスチンを取り込んだ網膜色素上皮細胞内での遺伝子変化をさらに詳細に解析する。さらに視覚アレスチン遺伝子を組み込んだ ウィルスAAV2/8を作成する。作成後、実験動物にて視覚遮蔽で近視誘導を行った上で作成した視覚アレスチンを強制発現ウィルスを硝子体もしくは網膜下への投与を用い、近視発症の鍵である眼軸延長にどのように影響するか超音波エコーを用いて眼軸を測定し評価する。今年度は近視発症のメカニズムとの関わりを解明し、近視抑制治療の開発に向けた土台を構築する。 この研究が遂行され仮説が再現できれば、世界で初めて近視発生の病態の解明となり社会的インパクトが強いだけでなく、近視治療の分子ターゲットが同定されることにより治療開発に拍車がかかるものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大のために、当該研究が一時停止したため。しかしながら研究の進捗状況はほぼ順調であり問題は生じていない。
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