近視の本態は眼軸の延長であり、それに伴い強膜が菲薄化し眼球の脆弱性を著しく増長することでさまざまな合併症が生じる。しかしながら、近視発症と進行のメカニズムは不明であり現在まで分子メカニズムに言及したエビデンスのある治療法は確立されていない。そこで今回我々は近視の分子メカニズムについて明らかにすることで新しい近視治療を開発することを目標とした。 今回の研究により、①視覚アレスチン(Arrestin1:Arr1)は眼瞼縫合により発現する実験近視眼(マウス)の網膜内での発現が減少する。②網膜で発現したArr1はRPEの貪食機能によりRPE自身に取り込まれる。③アデノウィルスを用いた網膜へのArr1発現を促す遺伝子導入により、近視誘導が約30%抑制される。④Arr1電子を導入した眼のRPEでは強膜のコラーゲン構造に影響を及ぼすTGFの発現が更新しており、その結果強膜は近視進行の原因の一つである菲薄化が抑制されていた。 上記のことから、近視の発症にはArr1が抑制方向に深く関与しており、Arr1の発現を亢進させることにより近視抑制を可能にすることが明らかになった。 今回の結果は、発症と進行のメカニズムが不明な近視の分子メカニズムについて世界で初めて明らかにしたものであり、治療の道を切り開いたと言える。近視は全世界で急速に増加しており大きな社会懸念となっていることから、今回の結果は世界に対して大きなインパクトを与えるだけでなく大きな社会貢献に寄与すると考えられる。
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