研究課題
2019年度、我々はシリコーンオイル注入眼に貯留するシリコーンオイル下液の低Fe濃度の生物学的意義を調べる目的で、眼球内のいずれかの細胞によるFe取込みによるものと仮定し研究を進めた。具体的には、培養細胞を用いたin vitroシリコーンオイル注入眼モデルにおいて、Fe取込みとそれに伴う細胞死(フェロトーシス:ferroptosis)について検討した。 Transwell上にマウス網膜視細胞である661W細胞を培養し、下区画に培地を、上区画にSOを注入したin vitro SO眼モデルを作成した[SO(+)群]。対照群は661W細胞をTranswell上に培養後、上下区画ともに培地を注入した[SO(-)群]。SO暴露から24時間後にFeRhoNox-1を用いて細胞内の遊離二価鉄イオンを比較した。また、in vitro SO眼モデルの下区画にFe(NH4)2(SO4)2 (FAS)を100μM加え、48時間後に乳酸脱水素酵素(LDH)を測定しSO(+)群とSO(-)群で比較した。その結果、FeRhoNox-1 assayでは、SO(+)群のFeRhoNox-1 陽性細胞数がSO(-)群に比べ有意に増加した。一方LDH assayでは、SO(+)群のLDHがSO(-)群に比べ有意に増加した。同様に、Transwell上にヒトミュラー細胞であるMIO-M1細胞を培養し、下区画に培地を、上区画にSOを注入したin vitro SO眼モデルを作成した[SO(+)群]。MIO-M1を用いた実験の結果、FeRhoNox-1 assayでは、SO(+)群のFeRhoNox-1 陽性細胞数がSO(-)群に比べ有意に増加した。一方LDH assayでは、SO(+)群のLDHがSO(-)群に比べ有意に増加した。これらのことから、SO注入眼ではSOF内のFeを視細胞が取込み、さらにミュラー細胞もしくは視細胞のferroptosisに関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
シリコーンオイル下液(SOF)中の低Fe濃度とSORVLを関連づける意義としてフェレトーシスという細胞死に関する新概念の存在を知り、これまでの知見がすべて網膜におけるフェロトーシスの存在の可能性に矛盾しないことから、実際にIn vitroでシリコーンオイル充填眼を模したモデルを作成し、実験を次の段階へ進めることができたため。
In vitro シリコーンオイル眼モデル構築に伴い、網膜内の様々な細胞を用いてシリコーンオイルによる影響を確認することができる。実際には、feの取り込み・筑西・排出に関与する遺伝子の変化を細胞ごとに確認する。また、in vivoにおける遺伝子変化を確認する目的で、ウサギに硝子体手術を行い、シリコーンオイルを注入し、その網膜でのFe関連遺伝子群の変化も確認し、どの細胞が実際に網膜フェロトーシスに関与している最重要因子であるかを判断する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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