研究課題
2020年度、我々はシリコーンオイル(SO)注入眼における網膜フェロトーシスを証明する目的で、白色家兎に硝子体手術を行い眼内にSOを充填させ、その眼球を用いて研究を進めた。具体的には、硝子体手術終了時にSOを充填させた白色家兎[SO(+)群]の眼球と、対照群として硝子体手術のみ行いSO注入しなかった白色家兎[SO(-)群]の眼球を用い、網膜切片を作成後、FeRhoNox-1染色を用いて細胞内の遊離二価鉄イオン蓄積部位を観察した。また、網膜lysateを用いてFe取り込みに関連する遺伝子群(フェリチン軽鎖・フェリチン重鎖・トレアンフェリン受容体)の発現を比較した。その結果、SO(+)白色家兎のシリコーンオイル下液はヒトで観察された変化と同様に酸化ストレスの指標であるmalondialdehydeの上昇が観察され、細胞死の指標の一つである乳酸脱水素酵素(LDH)の増加が確認された。またSO(+)白色家兎網膜ではFeRhoNox-1染色陽性細胞がSO(-)群に比べ有意に多かった。さらに、In vitroシリコーンオイル充填モデル・白色家兎網膜のいずれにおいてもこれらのことから、2019年報告内容と合わせ、In vitro SO モデル・白色家兎SO眼のいずれにおいてもトランスフェリン受容体の遺伝子発現亢進・フェロポーチン1遺伝子発現低下が確認され、細胞内にFeが蓄積する遺伝子変化が観察された。これらのことから、2019年報告内容と合わせ、In vitro SO モデル・白色家兎SO眼のいずれにおいてもFeの網膜取り込みと関連遺伝子群の変化が観察され、SO注入眼における網膜障害の本態がフェロトーシスに起因する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
シリコーンオイル下液(SOF)中の低Fe濃度とSORVLを関連づける意義としてフェレトーシスという細胞死に関する新概念の存在を知り、これまでの知見がすべて網膜におけるフェロトーシスの存在の可能性に矛盾しないことから、In vitroでシリコーンオイル充填モデル(2019年度報告書)にひきつづき白色家兎シリコーンオイル充填を眼作成し、実験を次の段階へ進めることができたため。
現在一般科学誌に投稿を進めている。実際に投稿し査読を受けた結果として、発見内容は大きいが、それゆえにヒト眼球で実際に証明されたデータが必要であり、そのデータを持ち合わせていない現状で受理されることはなかった。そこで、海外のアイバンクに問い合わせ、シリコーンオイルを充填したドナー眼球を入手できないか検討している。また、シリコーンオイル充填状態と同様に、その他の網膜疾患でもフェロトーシスの関与が強く疑われるものがあり、それらについても検討を進めている。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 8件)
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