2021年度はシリコーンオイル(SO)注入眼における網膜フェロトーシスを証明するためにさらに強力な証拠を得る目的で、2020年度に使用した白色家兎シリコーンオイル眼球モデルを用いた実験を追加で行った。具体的には、硝子体手術終了時にシリコーンオイルを充填させた白色家兎[SO(+)群]の眼球と、対照群として硝子体手術のみ行いシリコーンオイル注入しなかった白色家兎[SO(-)群]の眼球を用意し、手術時にFe(56)の安定同位体であるFe(57)を投与した。自然界にはFe(56)が多く存在することから、モデル動物の組織からFe(57)が検出されれば、そのFe(57)はもともと存在していたものではなく手術後に取り込まれたものであることが強く示唆される。また、フェロトーシスの証明に不可欠な脂質過酸化の関与をより強く証明するために、SO(+)群およびSO(-)群の眼球から網膜切片を作成し、4-HNE(4-hydroxy-2-nonenal)抗体を用いた免疫染色をおこなった。 これらの実験において、SO(+)群の白色家兎眼球の、特に網膜内の特定の層においてFe(57)の強い取り込みが確認された。加えて、白色家兎網膜を4-HNE染色で確認したところ、SO(+)群に比べSO(+)群で濃染が確認された。 これらのことから、2019年・2020年の報告内容と合わせ、In vitro SO モデル・白色家兎シリコーンオイル眼のいずれにおいてもシリコーンオイル注入眼においてFeが取り込まれ、網膜内でフェロトーシスが生じている、すなわちシリコーンオイル関連視力障害の本態が網膜のフェロトーシスに起因する可能性が強く示唆された。
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