研究実績の概要 |
本年度では昨年度に引き続き、自己網膜移植後あるいは網膜剥離復位後の網膜形態・機能について研究した。強度近視眼において周辺から黄斑部に移植された自己網膜組織の機能と形態の観察では、当初予定していた家兎などの中型動物によるシナプス同定は、速やか、かつ生きた実験動物の海外移送が現在困難であるためできていないが、黄斑円孔のサイズをカバーする程度の極小の刺激光を用いた黄斑部局所網膜電図とSS-OCTによる移植網膜とホスト網膜を区別した画像の解析により、周囲のホスト網膜の機能回復であると確信できた。国際的な網膜WEBシンポジウム(World Ophthalmology Congress, Asia-Pacific Vitreo-Retina Socsiety, Retina World Congress)において、機能向上のメカニズムと神経再生について議論した。 進行した緑内障を合併する強度近視眼の術前術後の観察では、黄斑部手術で行われる内境界膜剥離により、網膜内層機能が障害される可能性が示唆された。 裂孔原性網膜剥離においてみられる火山様黄斑部剥離の形態のSS-OCTによる観察では、原因は術前の網膜内浮腫とそれにより伸展するミュラー細胞との関係が想定され網膜復位後の機能には関連しないことがわかった。 遺伝性網膜疾患研究では、網膜色素変性症において本邦を4分割してそれぞれの地域にその遺伝子変異が特有であったことを論文化した。Best病ならびに劣性遺伝型Best病において、それぞれ18%および11%において脈絡膜新生血管を合併することが明らかとなった。滲出がある場合とない場合があり、57%に存在する高輝度物質の観察が重要であるが、OCT angiographyは有用な検出手段であることがわかった。
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