研究課題
代表者らは、マウス嗅球の外網状層において、細胞間接着分子のネクチン-1が、スポット状の新規細胞接着装置構造(ネクチン-1スポットと命名)を構成することを世界に先駆けて報告した。ネクチン-1スポットは、嗅球の外網状層では、同種の神経細胞である僧帽細胞の側方樹状突起同士を接着していた。嗅球の糸球体内では、単一の僧帽細胞の一次樹状突起が数回枝分かれするが、これら分岐した枝同士の間でもネクチン-1スポットが接着していたため、ネクチン-1スポットは、自己細胞間接着機能に関与することが示唆された。これまでの研究結果としては、免疫組織染色により嗅球僧帽細胞の一次樹状突起由来の姉妹樹状突起間接着部位においても、ネクチン-1が局在することを明らかにした。また、成体マウス網膜においても、ネクチン-1が外境界膜、外網状層(OPL)、内網状層(IPL)の亜層構造S4、S5層に発現することを確認した。特にOPLのネクチン-1は、GluA1との共局在、ならびに錐体細胞のheadに近接したOFF-双極細胞の樹状突起間に局在していることを確認した。マウスが開眼する生後2週間まで、網膜の構造は発生途中であり、ネクチン-1ノックアウトマウスで小眼球症になることが報告されていたため、眼球の発育にネクチン-1が重要な役割を果たすと考えられてきた。実際、生後10日のマウス網膜でネクチン-1の免疫組織染色を行うことで、網膜発生期にネクチン-1がOPLやIPLに発現することを示すことができた。以上から、感覚信号処理における嗅覚と視覚経路の二次ニューロンの適切な受容野を維持するため、ネクチン-1が姉妹樹状突起を束ね、制限された空間領域へ収める役割を果たしていることを示唆できた。更に、ネクチン-1スポットの嗅覚と視覚における意義及び役割の詳細を分子レベルで明らかにすることで、情報伝達機構の全容解明に貢献したい。
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