研究課題/領域番号 |
19K09996
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 智 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (30613236)
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研究分担者 |
須谷 尚史 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (30401524)
白髭 克彦 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (90273854)
出来尾 格 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (80338128)
木下 茂 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30116024)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイボーム腺 / マイボーム腺機能不全 / 加齢 / 性ホルモン / 常在細菌叢 / 脂質分析 / DNAシーケンス |
研究実績の概要 |
・健常者24例(20-35歳の男女各6例、60-70歳の男女各6例)を対象にDNAシーケンスを用いて眼瞼皮膚、結膜嚢、マイボーム腺の細菌叢について検討した。どの部位においても、Propionibacterium (Cutibacterium) acnes(C. acnes)の相対存在量が若年者に比べ高齢者では有意に低下していた。マイボーム腺では、高齢者ではcorynebacterium sppあるいはNeisseriaceae属が有意に増加し、加齢に伴い多様性が低下していた。加齢に伴う細菌叢の変化がマイボーム腺の脂質代謝、慢性炎症、に関与し、結果的に機能低下、眼表面の恒常性に影響している可能性が考えられ、論文報告した。 ・マイボーム腺炎角結膜上皮症の患者マイボーム腺分泌脂meibumを採取し細菌培養を行い、C.acnesと同定されていた中に、新種が含まれていたことが判明し、Cutibacterium modestum sp. novと命名し、論文報告した。 ・meibumの脂質組成に米国の共同研究者とともに、アジア人(日本人)と白人(米国人)の健常者の片眼からマイボーム腺分泌脂を採取し高速液体クロマトグラフィー・質量分析計(HPLC-MS)を用いて、網羅的な脂質分析を行い、比較検討を行った。その結果、「健常者meibumの脂質組成には人種による有意な差は認められない」という結論に達し、論文報告した。 ・マイボーム腺機能不全患者のうち、ラード(豚脂)様の特異なmeibum所見を有した症例について、meibumのHPLC-MSを用いた脂質分析を行い、全身的な脂質代謝異常は伴わないが、meibumに高TG・低WEの脂質組成を認める過去に報告のない特異なMGD症例[High triglycerides-low waxes syndrome syndrome]として論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者におけるマイボーム腺分泌脂(マイバム)の脂質分析、DNAシーケンスを用いた常在細菌叢の分析など、順調に検討を続けることが出来ているが、脂質分析の結果(lipidome)と細菌叢分析の結果(microbiome)の相関を検討する上では健常者のサンプル数の増加が必要であることが判明した。また、昨年度はコロナ禍でマイボーム腺機能不全患者のサンプルが十分確保できず、今年度目標数まで採取する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、マイボーム腺機能不全患者のmeibum採取を進め、健常者のmeibum採取も継続することで、脂質分析とともにDNAシーケンスを用いた眼瞼皮膚、眼瞼結膜嚢の常在細菌叢との比較、抗菌薬内服前後の細菌叢、脂質組成の変化などを明らかにし、新規治療法の開発へとつなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍のため、学会が中止あるいはweb開催となり予定していた旅費の使用がなかったこと、サンプル採取のために健常者を確保し謝金を支払う予定であったが実施できなかったこと、などが理由である。2021年度は、COVID-19感染予防を徹底しながら健常者の症例数増加を図りる予定であること、国際学会はweb参加になると思われるが、国内では移動可能であれば現地参加を行う予定である。
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