研究実績の概要 |
本研究では先のゲノムワイド関連解析(GWAS)で同定されたCSCの感受性遺伝子、CFH、SLC7A5 (コード蛋白LAT1)の他に、新たな2ステップGWASによってGATA5 近傍の一塩基多型がCSCと関連する事を明らかにした。そこで次のステップとして、GWASで同定されたCSC関連分子のうちLAT1の細胞局在およびその働きを解析する事によってCSCの病態における同分子の働きの解明を試みた。そのための具体的な実験および結果を以下に示す。 1)培養網膜色素上皮細胞(RPE)におけるSLC7A5遺伝子の基礎発現量およびストレスホルモンとされるハイドロコーチゾンまたはアルドステロン負荷時の発現量変化を調べ、それぞれのホルモン負荷により培養RPEにおけるSLC7A5遺伝子の発現量が経時的および容量依存的に増加する事を確認した。 2)トランスウェルを用いた培養RPEの物質輸送実験を行い、ハイドロコーチゾンおよびアルドステロン負荷による基底側から絨毛側へのフルオレセインナトリウム輸送量の相対的増加を認めた。これらの輸送量増加はLAT1選択的阻害薬の同時投与により対照群レベルあるいはそれ以下にまで有意に抑制された。 以上の結果から、ハイドロコーチゾンおよびアルドステロンは培養RPEにおける基底側から絨毛側へのフルオレセインナトリウム輸送量を増加させ、それがSLC7A5(LAT1)の発現亢進と関連している事が示された。 また、CSCとpachychoroid neovasculopathyの症例に対して光線力学療法(PDT)を行った後の臨床経過とARMS2, CFH, SLC7A5の遺伝子多型の関連を調べた研究では、SLC7A5 rs11865049のAアレルを有する群のみがPDT後に中心脈絡膜厚(CCT)の減少を認めず、その他は全てCCTの有意な減少を認めた。これはSLC7A5(LAT1)がCSCの病態に関与している事を示唆している。
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