今まで黄斑円孔 (MH) は、細胞増殖等による後部硝子体皮質の接線方向の収縮により生じるとされてきた。一方、研究代表者らは臨床的観察によりこの定説を覆し、MHの硝子体皮質は正常眼と同様に緩んで可動性があり、眼球運動に伴う水流により黄斑部が牽引されてMHが発症することを証明した。つまり、MHは通説のような「硝子体(牽引する側)の病気」ではなく、「網膜(受け手側)の病気」ということになる。特に、MHは女性に多いことから、性ホルモンや細胞接着因子等が、網膜の脆弱性や網膜硝子体間の接着異常を引き起こしている可能性を考え、MHの網羅的遺伝子発現解析 (GWAS) を開始した。 その結果、現時点では240例とPreliminaryだが、5番染色体にある細胞接着因子およびその関連領域に10e-7レベルでの関連が示された(未発表データ)。ゲノムワイド有意水準には達していないPreliminaryなデータで、かつ未発表のため、ここに具体的な感受性遺伝子を記載することはできないが、症例数が少ない割にはP値は高いと考えられる。今後、少なくともCase 500例を集めていく予定である。Controlに関しては、全国レベルで日本眼科学会が収集している正常日本人のGWASデータ(約2000例)を使用させて頂くことを検討している。尚、この正常日本人データに関し、当該施設は日本眼科学会へサンプル供与の協力を行っている。 Replication用に、正常眼のDNAは当該研究施設で700例ほど収集した。現在までに収集したMHのサンプルで、GWASにまわさずにPoolしているものは100例ほどになった。今後協力施設数を増やし、さらに規模を拡大していくように努める。
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