研究課題/領域番号 |
19K10000
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小島 隆司 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (90407099)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドライアイ / 角膜 / 神経障害 / 不安行動 / Nrf2 / TRPV1 / TRPA1 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Nrf2-Keap1システムがドライアイの病態メカニズムにおける神経保護作用を検討することにある。ドライアイでは、眼表面障害が軽微であるにも関わらず、強いドライアイ症状が生じる場合があり、最近は角膜の神経障害が注目されている。まず、本年度は環境ストレスドライアイモデルを用いて、野生型とNrf2ノックアウトマウスでの角膜神経の形態及び機能の比較を行った。角膜神経の形態評価には生体共焦点顕微鏡を用いて、環境ストレス負荷前後の角膜上皮下神経叢の変化を評価した。その結果、野生型及びNrf2ノックアウトマウス両群ともに、ストレス負荷によって神経密度の低下を認めたが、野生型とNrf2ノックアウトマウスでは、角膜上皮下の神経密度の変化に大きな差は認め無かった。次に環境ストレス負荷前後で、角膜及び結膜組織を採取して、RT-PCRにてmRNAを解析したところ、TRPA1及びTRPV1の発現が有意に亢進していた。TRPA1やTRPV1はドライアイによる痛み症状に関与している可能があり、非常に興味深い所見と思われた。 続いて角膜神経の野生型において、角膜知覚及びTRPV1のアゴニストであるカプサイシン点眼刺激後の掻痒行動を評価した。カプサイシンの影響により角膜知覚は低下していたが、掻痒行動が増強されていた。これはRT-PCRによってTRPV1の発現が高くなっていることを反映している結果と考えられた。 以上が現在の進捗状況であるが、これまでに研究結果によりNrf2の1つの役割として、TRPV1およびA1の発現をコントロールし、ドライアイ症状発現を起こしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染拡大により、年度後半において実験施設及び動物飼育条件に制限が生じ、途中で大規模な実験を縮小せざるを得なかった。次年度に繰り越した費用は、動物の飼育費用、及び免疫染色の試薬購入にあてる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
角膜におけるTRPV1及びA1の発現は角膜神経以外にも存在するため、今後は角膜のwhole mount免疫染色を用いて、TRPV1及びTRPA1の局在を確認する予定である。具体的には、環境ストレス負荷前後で角膜組織を採取し、TRPV1抗体及びTRPA1抗体を用いて免疫染色を行う。神経のマーカーとしてはβチュブリン抗体を用いる。免疫染色後共焦点顕微鏡を用いて角膜の上皮下神経叢における発現を中心に観察を行う予定である。 また、野生型では環境ストレス負荷後に角膜知覚は低下する一方、カプサイシン刺激による掻痒行動は増えている。野生型でもTRPV1への反応性が強くなっていることが示唆された。前年度の角膜組織におけるRT-PCRの結果では、Nrf2ノックアウトマウスで環境ストレス負荷後にTRPV1の発現が増強していた。このことより今後Nrf2ノックアウトマウスで同じ実験を計画しており、野生型とノックアウトマウスでの反応性の違いを検討する予定である。また、ドライアイによる眼の持続的な痛みは、不安行動に繋がり社会活動への影響が懸念されている。今後環境ストレス負荷前後でNrf2ノックアウトマウスと野生型で、不安行動の解析(Open field試験、高架十字試験)にてNrf2の影響を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大により、年度後半において実験施設及び動物飼育条件に制限が生じ、途中で大規模な実験を縮小せざるを得なかった。次年度に繰り越した費用は、動物の飼育費用、及び免疫染色の試薬購入にあてる予定である。
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