Nrf2はこれまでに炎症増悪因子であるインターロイキン6(IL-6)やインターロイキン1β(IL-1β)などのサイトカインの遺伝子発現を抑制することが分かっている。TRPV1はドライアイにおける眼症状に大きく関与していると考えられており、症状緩和のターゲットレセプターである。これまでの研究でNrf2は、TRPV1及びA1の発現を抑制し、痛みを感じにくくしている可能性が示唆された。 今年度は、Nrf2ノックアウトマウス、野生型マウスで、環境ストレス負荷前後の酸化ストレスの蓄積を免疫染色を用いて検討した。用いた酸化ストレスマーカーは、脂質酸化ストレスマーカーである4-HNE(4-hydoxy-2-nonenal)及びDNA酸化ストレスマーカーである8-OHdG(8-hydroxy-2’-deoxyguanosine)を用いた。 10週齢マウスにおける環境ストレス負荷前の酸化ストレスの蓄積は、角膜上皮細胞、角膜実質、角膜内皮細胞、結膜上皮細胞で認めたが、二群間で差は認めなかった。しかし、環境ストレス負荷後は、Nrf2ノックアウトマウスではコントロールの野生型に比べて強い角膜上皮細胞、角膜実質、結膜上皮細胞において著明な4-HNE及び8-OHdGの蓄積を認めた。 炎症性サイトカイン、メディエーターの発現解析には、LUNARIS(ベリタス)を用いた。涙液は、cotton threadにて10mm濡れる長さ分を集めて解析した。 環境ストレス負荷前後で、インターフェロンγ、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-6、IL-17A、TNF-αの涙液中の濃度を調査した。TNF-αは、環境ストレス負荷後に、Nrf2ノックアウトマウスで野生型より有意に高値を示した。その他のサイトカインにおいては環境ストレス負荷前後での有意差は認めず、二群間でも環境ストレス負荷前後ともに差は認めなかった。
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