研究課題/領域番号 |
19K10002
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
奥 英弘 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90177163)
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研究分担者 |
小嶌 祥太 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10388259)
池田 恒彦 大阪医科大学, 医学部, 教授 (70222891)
喜田 照代 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90610105)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | tauopathy / 網膜神経節細胞 / 視神経傷害 / autophagy |
研究実績の概要 |
tau重合体に代表される異常タンパクの蓄積は、神経変性疾患の病因の一つと考えられている。tauは微小管結合タンパクで、軸索の機能維持に必須であるが、軸索傷害時にはリン酸化され凝集し、神経細胞死の原因となり、この病態はtauopathyと総称される。 tauopathy は加齢による神経変性など、慢性疾患に関与していると考えられていたが、ラット視神経挫滅モデルによる急性の視神経軸索傷害でも、死滅過程にある網膜神経節細胞にtauタンパクの蓄積がみられた。またsiRNAを用いてtauタンパクの発現を抑制すると、網膜神経節細胞死が抑制された。これらの結果から、急性の視神経傷害による神経変性過程にも、tauopathyが関与していることが確認できた。 tauタンパクの発現は、autophagyのadaptor proteinであるP62と共発現していた。また視神経傷害後の網膜では、immunoblotによりP62の増加が確認できた。したがって、視神経傷害によりautophagyによる不要タンパクの除去機能は低下すると考えられる。その結果、凝集し不溶化したtauタンパクは、ユビキチン化されP62に結合し、分解されずに蓄積したものと考えられた。 これらの結果から、tauタンパクの細胞内蓄積が、細胞障害性に働くと考えられた。rapamycin によるautophagyの促進による神経保護作用も確認できた。今後はtauのリン酸化抑制を介し、神経保護が期待できるかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
死滅過程にある網膜神経節細胞で、tauの発現が亢進し、siRNAを用いtauをノックダウンすると、神経保護的に作用したことから、急性の視神経傷害時にもtauopathy が生じている可能性が示唆された。現在tauのリン酸化を抑制し、tauの蓄積を抑制できる可能性につき検討している。tauのリン酸化に関与する可能性が高いcyclin-dependent kinase 5 (Cdk5)を阻害すると、視神経挫滅後の網膜で、リン酸化auの発現は減少し、神経保護的に作用する結果が得られている。今後も計画にそって研究を推進して問題ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
急性の視神経傷害時にtauopathyが関与していることが示唆されたので、治療的側面から今後の研究を発展させる。Cdk5の特異的阻害剤であるroscovitineを硝子体に投与することで、リン酸化タウの発現が抑制され、神経保護作用が発揮される結果を得ているので、生化学的、免疫組織化学的手法を用いて検証をすすめ、論文化していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は3年で実施することを計画しており、2020年度はその2年目にあたる。研究費はおおむね計画通りに使用したが、若干の次年度使用額が生じた。次年度は試薬などの消耗品に使用する予定である。
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