研究課題/領域番号 |
19K10003
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
平田 憲 久留米大学, 医学部, 客員教授 (60295144)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 実験近視 / 脈絡膜 / FIB/SEM / 非血管性平滑筋 / 水晶体嚢 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請期間にヒヨコの実験近視眼を用いて、1. 正常組織のNVSMCsとlacunaeの構造を明らかにすること、2. 実検近視におけるNVSMCsとlacunaeの構造変化 を明らかにすること、3. 種々の薬剤によるNVSMCsとlacunaeへの影響と近視発生メカニズムへの関与について明らかにすることである。 2022年度も昨年度に引き続き、ヒヨコ脈絡膜NVSMCs/lacunaeの構造について検討を行った。とくにFIB/SEMを用いた、脈絡膜毛細血管板、脈絡膜間質、lacunae、強膜-脈絡膜移行部の脈絡膜微細構造の解析を重点的に行った。対象眼および実験近視眼の間に明らかな細胞の配列、細胞間接合における差異は見られなかったものの、近視眼では明らかなlacunae構造の拡大が見られ、一層の薄い細胞による裏打ち構造が確認された。細胞は連続性を保持していた。SEMを用いた脈絡膜毛細血管版におけるfenestraeの数においても明らかな差は見 られなかっ た。 FIB/SEMをもちいたヒト水晶体嚢の微細構造の解析も行った。白内障と診断され、手術適応となった50例50眼(80歳以上の高齢者群25例25眼、65歳以下の中年群25例25眼)を対象とし、前嚢切開時に前嚢を採取し、電顕用にエポン包埋したのち、前嚢の中央部断面を切削し、走査電子顕微鏡にて反射電子像を観察した。中年群の水晶体嚢は20/25眼は均一な構造を呈していたが、5眼で層状構造を呈していた。高齢者群では5眼のみが均一な構造を呈していたが、残りの20眼では層構造を呈しており、うち13眼では前嚢断端に層構造の離開が見られた。前嚢には加齢に伴い、層構造が出現する。層構造の出現は水晶体嚢の脆弱性をもたらすと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も、前年度に引き続きNVSMCsとlacunaeの対象眼と実験近視眼の構造の比較が主目的であった。 免疫染色による光学顕微鏡的観察では脈絡膜内に存在する細胞群、 とくにNVSMCsの免疫染色による局在を検索したが、lacunaeを構成するリンパ管様組織との関 連が解明できなかったこと。 SEM用にエポン包埋標本も同時に作製し、NVSMCsの三次元的微細構造解析および脈絡膜毛細血管のfenestraeの定量解析を行ったが、正常眼と近視眼間で有意差は見られなかったこと。 FIB/SEMによる3次元的な脈絡膜組織の微細構造の解明を行ったが、近視発生に関連するとされる近視群における特徴的な構造を検出することが困難であったこ と。 が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、NVSMCsとlacunaeの正常構造および実検近視眼の脈絡膜のFIB/SEMによる時系列変化の解析を今後も継続していく。さらに長期的な脈絡膜変化 (lacquer cracksをはじめとする、近視特有の病変発生時の脈絡膜の構造変化)についても検討を重ねる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、本年度で実験を終了予定であったが、先に記載したごとく、次年度も引き続き、当該研究を継続していく予定で、すでに延長申請を行った。 実験動物および標本作成に要する実験試薬のための経費、さらに論文作成時の校正料および論文投稿料として次年度に一部経費を計上した。
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