真皮を構成する細胞外マトリックスは線維成分と液性成分から成るが、線維成分の構造、特にコラーゲン線維と弾性線維が構築する三次元的構造については不明な点が多い。これまで研究代表者は二軸伸展法と組織透明化法、そして多光子顕微鏡を組み合わせた方法で明瞭にコラーゲン線維と弾性線維が構築する三次元的構造を可視化する方法を開発した。本研究プロジェクトでは、ヒト皮膚の柔軟かつ強靭な特性の源となるミクロレベルの変形メカニズムを明らかにすることを目的とした。特に、異なる伸展ストレスを受ける真皮の内部で生じる線維構造の変化を、三次元かつ定量的に解析するために最適な方法を模索した。一軸伸展器と等二軸伸展器を用いてヒト真皮にストレスを与え、伸展された状態を維持したまま固定して組織透明化を行った。組織透明化法にはCUBIC法を使用した。多光子顕微鏡でコラーゲン線維と弾性線維を第二高調波発生と自家蛍光を用いて描出した。スキャンは表皮側および側面から連続的に観察、撮影し、Z方向に100枚のスタック画像を得た。これらの線維の三次元幾何学的構造について、二種類の異なる手法(高速フーリエ変換およびカーブレット変換法)を用いて定量的解析を行った。カーブレット変換法では、線維配向に関する角度のヒストグラムが得られる。ヒストグラムの分布を強度として表し、Z方向に関する強度分布をカラー表示した。一軸伸展では線維が配向する傾向が可視化された。等二軸伸展では真皮に内在する二軸性配向が可視化された。。
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