乳房再建術においては、感覚機能も術後QOLのために重要である。知覚皮弁は皮島が大きく露出する従来型の乳房切除術(CM)後の再建においてその有用性が報告されているが、皮膚温存乳房切除(SSM)や乳輪乳頭温存乳房切除(NSM)における有用性は不透明である。本研究ではラット背部皮膚知覚皮弁モデルを用いて、知覚皮弁がSSMやNSM後の皮膚知覚回復において有用か検討した。 ラットの背部皮神経をTh13の左内側枝のみ残して全て切除することで、ラット背部に皮膚無知覚領域に囲まれた知覚領域を作成した。知覚領域を島状皮弁として挙上した後、一部の皮島を除いて脱上皮し、皮下へ埋め込んだ群(SSM群、n=6)と、全ての皮島を脱上皮し皮下へ埋め込んだ群(NSM群、n=5)をそれぞれ作成した。対照群として、島状知覚皮弁をそのまま再縫合したモデルを作成した(CM群、n=5)。術後、鑷子でのピンチングに対する皮筋の反射収縮反応を用いて、知覚領域面積の変化を経時的に評価した。また、術後12週目において、新規知覚領域における再生神経を免疫組織学的に評価した。 SSMとCM群では、術後早期より皮島を中心として知覚領域が拡大した。NSM群では術後4週から埋め込んだ皮弁上の皮膚に新規知覚領域が出現し、その後拡大した。術後12週における知覚領域の面積は、SSM、NSM群間で有意差を認めなかったが、それらの面積はCM群の知覚領域面積と比較し有意に小さく、元の皮弁の面積と同程度であった。組織学的には、新規知覚領域内の真皮、および皮下に埋め込んだ皮弁組織においてS100、PGP9.5陽性神経線維が観察された。 ラット背部の島状知覚皮弁を無知覚領域皮下へ埋め込むことで、脱神経された皮膚への神経再生および再知覚化を認めた。これらの結果は、SSMやNSM後においても、再建乳房の知覚化に知覚皮弁が有用である可能性を示唆している。
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