研究課題/領域番号 |
19K10009
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
峯田 一秀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70747815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ケロイド / 伸展刺激 / カルシウムシグナル応答 / 異常応答 |
研究実績の概要 |
独自の細胞伸展マイクロデバイス(特許取得済)を用いて、ケロイド由来線維芽細胞特有のカルシウムシグナル応答について検証した。以前は5分間が限界であったが、30分間のリアルタイム観察を可能にした。正常皮膚由来線維芽細胞(N-FBs)とケロイド由来線維芽細胞(K-FBs)に対して、繰り返しストレッチ刺激を付与しながら、個細胞単位で細胞内Ca2+濃度の変化をリアルタイムに蛍光観察することにした。 培養皿に設置したシリコーンゴム製のデバイス上に、N-FBsもしくはK-FBsを播種し培養する。Ca2+蛍光標識薬(Fluo-8H)ならびに細胞質蛍光標識薬を反応させた後、10%ストレッチ刺激を加えつつ(12回/min)、共焦点顕微鏡下に30分間の連続撮影を行った。細胞内Ca2+濃度の変化は、二つの蛍光標識薬の蛍光輝度比で表し、輝度比がベースラインから一過性に20%以上上昇したものを細胞応答陽性と定義した。 結果として、細胞応答率はN-FBs群(20.4%)とK-FBs群(23.1%)で有意差はなかった。応答回数は、N-FBs群の1回80%,2回10%,3回10%と比較して、K-FBs群では1回50%,2回33%,4回17%であり、複数回応答する細胞が多くみられた。応答開始時間は、N-FBs群(916±163秒)と比較して、K-FBs群(450±129秒)では応答開始が速い傾向がみられたが、有意差はなかった。蛍光輝度比のピーク値からROC解析で得られた正常応答のカットオフ値は2.12であり、K-FBs群の11.3%でカットオフ値を超える過剰応答がみられた。 両群ともに約2割でカルシウムシグナル応答がみられ、約8割は応答しなかった。今回、K-FBs群で過剰応答を示す細胞が約1割存在しており、複数回応答する細胞が多いことも含め、ケロイド体質特有のsubpopulationであると推察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で、医師としての診療の比重が多くなったこと、主に実験を行っている大学院生が非常事態宣言中及びまん延防止等重点措置中の当大学の規定で実験が長期間ストップしたたため、やや遅れが生じている。現在(4月19日時点)も大学院生とはリモートによるカンファレンスのみであるが、シングルセル解析のデータ処理を自宅で行っており、令和3年度中に遅延を取り戻せる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ケロイド由来線維芽細胞における細胞内Ca2+が過剰に上昇するsubpopulationの原因を調べるために、正常皮膚由来線維芽細胞とケロイド由来線維芽細胞に48時間の繰り返しストレッチ刺激を加えた後、シングルセル解析を行った。両群とも数千細胞それぞれの発現遺伝子の情報が得られており、データ処理を行っているところである。細胞内カルシウム濃度を調節している細胞膜上のTRPチャネルと小胞体に関連する遺伝子や各種細胞内シグナル伝達について検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、研究遅延による物品費の支出が予定よりも少なかったこと、また学会参加がほとんどオンラインで旅費が少なかったことによって次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、遅れている実験に必要な物品の購入や、投稿中の論文の校正や投稿費等に使用する予定である。
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