マクロファージの炎症促進性のM1から抗炎症性のM2への変換が創傷の炎症期から増殖期への進展にとって重要である。しかし、糖尿病性創傷を含む難治性創傷では、マクロファージの変換が障害されていることが明らかとなっている。近年、様々な疾患の発症や進行にMicroRNAが関与していることが次々を明らかになっている。さらに、細胞の分泌顆粒に含有され血液をはじめ体液中に分泌される分泌型エクソソームmicroRNA (exosomal miRNA)が細胞間情報伝達システムとして働き、炎症反応における役割や種々の疾患への関与が知られる様になってきた。しかし、難治性創傷化の要因と考えられる慢性炎症に関する細胞間情報伝達システムとしてのexosomal miRNAの意義は不明である。 本研究では、難治性創傷の延性炎症反におけるexosomal miRNA-21の役割を検討し、慢性炎症についての新たな知見を得ることでした。LPS・ATPなどの刺激により細胞での炎症を起したところmiR-21の発現増加が見られた。miR-21がM1(炎症性)マーカー蛋白質の発現増加とM2(抗炎症性)マーカー蛋白質の発現低下を及ぼすことが分かりました。M2マクロファージにmiR-21を導入した実験ではM2マクロファージがM1へ形質変換されることがわかりました。Exosomal miR-21と炎症との関連性もあきらかになった。Exosomal miR-21はNFkappaBシグナルを介してNLRP3とIL-1betaの遺伝子発現増加を起こした。また、Caspase-1の活性化も行い、NLRP3インフラマソームの活性化を引き起こし、慢性炎症に非常に関していることが明らかになった。本研究では、exosomal miR-21とNLRP3インフラマソーム活性によるマクロファージ異常との関連性をあきらかにすることができた。
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