当科で脂肪吸引手術を行った際に得られた脂肪組織から脂肪組織由来幹細胞(ASC)と脂肪組織由来血管内皮前駆細胞(AEPC)の純化培養を行った。7週齢オスのヌードマウスの背部に1回5Gy週2回計40Gyの放射線照射を行い、照射終了3ヶ月後に皮膚を切除して慢性放射線皮膚障害モデルを作成した。このモデルに対してASCおよびAEPCを単独もしくは併用投与を行い、創傷面積を比較することにより創傷治癒能を評価した。ASCおよびAEPCを単独もしくは併用したすべての群においてvehicleのみを投与したコントロール群と比較して創傷治癒能の改善がみられた。特にASCとAEPCを併用投与した群において、それぞれ単独投与した群と比較して有意に創傷治癒能の改善がみられた。細胞投与から28日後に創部の組織を採取して組織病理学的評価を行った。抗ヒトゴルジ抗体を用いて染色を行ったが、いずれの標本からもヒト由来細胞の生着は確認できなかった。またvehicleのみを投与したコントロール群と比較して細胞投与群でも創傷組織に含まれる血管数には有意差はみられなかった。放射線非照射のコントロール群では創傷組織に含まれる血管数は有意に多かった。創傷治癒能の改善は投与細胞そのものの生着ではなく細胞が分泌する液性因子による影響が大きいことが示唆された。このことから細胞そのものの投与ではなく培養上清などの液性因子のみによる投与でも慢性放射線皮膚障害に対する創傷治癒能の改善が期待できることが推察された。
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