研究課題/領域番号 |
19K10017
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
赤坂 喜清 東邦大学, 医学部, 教授 (60202511)
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研究分担者 |
藤澤 千恵 東邦大学, 医学部, 講師 (10393000)
大西 清 東邦大学, 医学部, 教授 (30194228)
中道 美保 東邦大学, 医学部, 助教 (70804178)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | microRNA / bFGF / PDGFRα / 線維芽細胞 / 皮膚 / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
ラット創部由来線維芽細胞のmicroRNA arrayから探索同定したmicroRNA146b-5は、Luciferase assay法の解析から標的分子がPlatelet derived growth factorα(PDGFRα)であることが判明された。そこで上記の線維芽細胞にmicroRNA146b-5pを導入すると、PDGFRαの発現低下とともにCollagen type 1と3の発現低下も確認された。よってmicroRNA146b-5pによる線維化抑制能が培養細胞レベルで証明された。本年度はmicroRNA146b-5pによる瘢痕抑制能をin vivoで実証するため、ラット皮膚創部へのmicroRNA146b-5p mimicをpoloxamer P407/P188 gelとともに投与した。microRNA146-5pによる瘢痕線維化抑制能は、創部の瘢痕線維化や開放創の面積測定以外にPDGFRα, Collagen type 1と3、Smad3とαSMAの発現性から評価した。その結果、microRNA146b-5p mimic投与部では開放創と瘢痕線維化巣の面積の有意な減少がみられ、同時に標的であるPDGFRαの発現低下とCollagen type 1と3, Smad3とαSMAの発現減少も認められた。したがってmicroRNA146b-5p投与による標的PDGFRαの発現抑制からCollagen type 1と3、Smad3とαSMAの発現が低下して瘢痕線維化がin vivoで抑制されたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで探索したmicroRNA146b-5pが標的分子 PDGFRαの発現抑制してCollagen type 1と3の発現抑制から線維化を抑制することを培養細胞レベルで証明した。しかし実際にin vivoでmicroRNA146b-5pが皮膚創部の瘢痕線維化を抑制するかどうかは全く不明だった。今回はこれを明らかにするため、microRNA146b-5p mimicを合成し、徐法効果の高いpoloxamer P407/P188 gelとともに皮膚創部に投与した。この結果、創部の瘢痕線維化の面積が減少し、この過程で標的PDGFRαやCollagen type 1と3、Smad3とαSMAの有意な発現抑制が観察された。したがってmicroRNA146b-5pは皮膚潰瘍の瘢痕形成過程でCollagen 1,3の発現抑制から線維化を抑制したことが判明し、当初から予想されたmicroRNA146b-5pの瘢痕線維化抑制能をin vivoで実証することができたことから上記の判定を下した。
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今後の研究の推進方策 |
microRNA146b-5pの標的PDGFRαの発現抑制による瘢痕線維化の抑制メカニズムを検討する。特に標的PDGFRαの発現する間葉系幹細胞に対するmicroRNA146b-5pの影響について検討する。これまでの報告では間葉系幹細胞のうち、細小動脈や毛細血管の周囲のpericyteにPDGFRα陽性の間葉系幹細胞の存在が想定されており、この細胞が増殖分化から筋線維芽細胞に分化して瘢痕線維化を実行すると考えられている。そこで①血管周囲pericyteに標的PDGFRαが発現するのかどうか②この血管周囲のPDGFRα陽性pericyteがmicroRNA146b-5pの標的DGFRαを発現抑制し、その抑制効果から筋線維芽細胞の分化増殖を抑制し瘢痕線維化の抑制に貢献しているかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請研究課題を遂行する上で極めて重要なmiR146b-5p欠損による瘢痕促進能の解析をmiR146b-5p欠損ラットを用いて精力的に解析していく予定である。分担研究者である藤澤氏がをmiR146b-5p欠損ラットを飼養しており、ヘテロのmiR146b-5p欠損ラットを交配してホモのmiR146b-5p欠損ラットを繁殖させる計画を本年度中に完了させる予定であった。しかしヘテロのmiR146b-5p欠損ラットの継代繁殖が困難であり次年度までその作業を継続する必要性が生じたので、その費用として100,000円を次年度に繰り越した。次年度はこの100,000円を全てホモのmiR146b-5p欠損ラットの飼養に必要な餌代、継代後のmiR146b-5p欠損確認のためのDNA抽出キット購入費やシークエンス代に用いる。
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