研究課題/領域番号 |
19K10018
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
副島 一孝 日本大学, 医学部, 准教授 (00246589)
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研究分担者 |
三角 浩司 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00442682)
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
樫村 勉 日本大学, 医学部, 准教授 (20570740)
仲沢 弘明 日本大学, 医学部, 教授 (60180270)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 培養表示 / 脱分化脂肪細胞 / 基底膜構築 / 人工真皮 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は脱分化脂肪細胞(dedifferentiated fat cells、以下DFAT)を導入した次世代型人工皮膚の開発であり、 先行実験(承認番号:AP11M0002)でラットを用いた人工真皮移植モデルで人工真皮移植時にDFATを投与すると人工真皮内への血管新生が著明に促進することを明らかにした。 今回の動物実験ではヒトDFATでも同様の効果が得られるのかを検証することを目的としている。今年度は免疫不全マウスの皮膚欠損に人工真皮を移植するモデルを用いて、ヒトDFATの血管新生効果について検証を行った。免疫不全マウス(SCIDマウス CB17/Icr-Prkdscid/CrlCrlj)の背部に1.5X2cm大に全層皮膚欠損を作成し、人工真皮(Pelnac、グンゼ社製)を移植した。その際に、対照群と移植床にヒトDFATを移植する治療群を作成し、術後1週間目、2週間目に組織採取してH-E染色、Masson Trichrome染色、抗マウスCD31免疫染色および抗ヒトcD31免疫染色を行って評価した。 その結果、治療群では抗マウスCD31免疫染色の発現が治療群で有意に増加し、ヒトDFAT治療により血管新生促進効果が示唆された。また、Masson Trichrome染色では、治療群で有意に染色濃度が濃く、ヒトDFAT治療によりコラーゲン産生の促進、すなわち真皮様組織の形成促進が示唆された。しかしながら、抗ヒトDFAT免疫染色は移植後2週前の時点では治療群においても陽性発現が確認されなかった。つまり、移植されたヒトDFATが血管内皮細胞に分化して血管新生促進に寄与するという仮説を裏付ける証拠は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト皮下脂肪組織からの脱分化脂肪細胞(DFAT)の単離・培養について、日本大学倫理委員会の承認(承認番号: RK-161011-3)の元、10例の被験者より文書で同意を得て、腹部皮下脂肪組織を吸引採取しDFATの調整を行ったところ、全例で問題無く調整を行うことができた。調整したDFATは動物実験に使用できるように凍結保存とした。 免疫不全ブタについては、共同研究者が体細胞クローン技術と遺伝子組換え技術を併用して作出したヒト幹細胞を拒絶すること無く移植可能なIL2RG遺伝子/RAG2遺伝子ダブルノックアウトブタを使用するために、本学動物実験倫理委員会に遺伝子組換実験計画を申請して承認を得た(本研推内発第61号)。ブタの飼育および実験は本学ラボラトリーアニマル系免疫不全ブタ飼育室およびラボラトリーアニマル系循環機能質(いずれも実験室レベルP1A)で行えるように確保した。 培養表皮については、当初、免疫不全ブタより採取した皮膚からジャパンティシューエンジニアリング社に依託して、自家培養表皮を作成することを計画したが、免疫不全ブタの生存期間が短いことから、表皮培養に要する1ヶ月を待機して実験に供することが困難であるとの意見から、培養表皮もヒト培養表皮を移植することに変更した。ヒト培養表皮はジャパンティッシュエンジニアリング社に提供を依頼する。 また、micro dermisを作成するための実験器具としてRIGENERA(human brain wave社製)の使用準備を行った。 以上、免疫不全ブタを用いてヒトDFAT、ヒト培養表皮を移植する実験準備を整えることができたので、現在、免疫不全ブタの誕生を待機中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2,3年度は免疫不全ブタを使用した実験を行う予定である。免疫不全ブタ(IL2RG遺伝子/RAG2遺伝子ダブルノックアウトによりB細胞、T細胞のいずれの免疫機能も抑制し、ヒト細胞を拒絶無く移植可能)の背部に全層皮膚欠損創を作成して、人工真皮を移植し、術後10日目にヒト培養表皮を移植するモデルで、治療群には人工真皮移植時にヒトDFATを投与する。移植後2週間目に組織採取して、基底膜構築について、laminin-5, collagen IVの免疫染色および当科電子顕微鏡像で検索する予定である。 また、令和元年度に行った免疫不全マウスを用いたヒトDFATの血管新生促進効果の検証実験についても、移植後2週間目までに抗ヒトCD31免疫染色陽性細胞の発現が確認できなかったので、移植後3,4週目まで観察期間を延長して再確認したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来計画していた免疫不全ブタを用いた実験を行うための準備として、P1Aレベルの飼育室、実験室の確保、遺伝子組換え実験計画の承認、免疫不全ブタの供給確保などに当初想定した以上の時間を要したため、本年度中に実験を開始できなかった。代替実験として免疫不全マウスを用いた実験を行い、成果を得ることができたが、当初計画した予算よりも少額で済ませることができた。今年度の繰越金は次年度の免疫不全ブタの確保、ヒト培養表皮の供給に使用する計画である。
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