研究課題/領域番号 |
19K10028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松浦 喜貴 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70772383)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞死 / burn woun progression / 新規治療材 / シルクエラスチン |
研究実績の概要 |
熱傷に関する研究として、細胞死に注目してアポトーシスとネクローシスとburn wound progressionに関する研究を行ってきた。熱傷の低温度では、アポトーシスが、温度上昇すればネクローシスが生じることが示され、線維芽細胞を使用したin vitroの実験では、ベタメタゾンによるアポトーシス予防効果がすでに示されている。さらなる追加の実験として、ネクローシスやアポトーシスを抑制する薬剤が熱傷の細胞死を抑制するかどうかについて検証してきた。しかし、in vitoroでは細胞死を抑制する有用な実験結果は得られなかった。また、熱傷作成装置を用いたラットを用いた研究では、ベタメタゾン軟膏によるburn wound progressionの予防効果は一部認めた。組織学的な評価として、アポトーシスをみるためにタネル法を用いた。熱傷辺縁でのアポトーシス陽性細胞は確認できたものの、タネル陽性細胞とburn wound progressionとの関係を示すことが困難であった。つまり、組織の実験ではベタメタゾンによるburn wound progressionの抑制はあるものの、ベタメタゾンがアポトーシスを抑制し、burn wound progressionに導くと予想した仮定は、実験データからは証明することはできなかった。 熱傷の新規治療として、シルクエラスチンの創傷治癒効果をラット熱傷モデルについても検証した。Ⅱ度熱傷、Ⅲ度熱傷のデブリードマン後に使用したところ、上皮化の長さ、肉芽組織の厚さ、創部収縮率に関して有用なデータが得られた。メカニズムの検証として、血管新生についても調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した実験内容は、ほぼ実施することができた。予想した結果と異なったり、不十分な結果もあったが、有用なデータを得ることができた。また、熱傷の新規治療材については、計画の内容変更はあったものの、新しい熱傷治療につながるものも検証できた。実験結果をもとに論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
実臨床の熱傷治療およびburn wound progressionの評価として、毛細血管スコープを用いての検証も考えている。実臨床では、客観的な評価が難しいところがある。このスコープを用いることで、毛細血管の損傷(閉塞)がわかり、浅達性、深達性Ⅱ度熱傷やⅢ度熱傷の区別が可能である。そして薬剤の効果判定や治療効果の判定に有用かもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今の国際情勢や新型コロナウィルスの感染による物流の停滞により納期が遅延し2022年度に使用する予定であった助成金に余りが生じた。研究に必要な経費(試薬、実験動物の購入等)に充てる計画である。
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