熱傷治療の新規治療法として、新規材料の研究を行ってきた。実験としてラット熱傷モデルを作成した。熱傷モデルでは、深達性Ⅱ度とⅢ度のモデルを使用し、実際の臨床現場で扱う熱傷に近いモデルとした。早期にデブリードマンを行い、新規材料のシルクエラスチンスポンジを適応するという内容である。評価項目は、上皮化の長さ、肉芽形成(肉芽の面積)、創部の収縮率とした。そのほかにも新生血管について評価を行った。深達性Ⅱ度熱傷モデルでは、5日目と7日目の病理組織での上皮化の長さとマクロでの創部収縮についてコントロール群とシルクエラスチン群で比較を行った。また、Ⅲ度熱傷モデルではデブリードマン後の7日と14日で上皮化の長さと肉芽形成、そして創部収縮について2群比較した。新生血管については、新生血管数についてⅢ度熱傷モデルの7日目で評価を行った。結果として、深達性Ⅱ度熱傷モデルでもⅢ度熱傷モデルでも、シルクエラスチン群は早期の創傷治癒を確認することができ有意差も認めた。また、Ⅲ度熱傷モデルの14日目ではシルクエラスチン群は肉芽形成および上皮が多く、創傷治癒に至っていることから、コントロール群と比較して瘢痕の違いを示唆するものであった。Ⅲ度熱傷モデルの7日目ではシルクエラスチン群で有意に新生血管が多く、創傷治癒促進のメカニズムとして新生血管の関与が考えられた。 細胞死と熱傷の研究では、熱傷後早期にステロイドの1種であるベタメタゾンを使用することで、ラット熱傷モデルにおけるburn wound progressionを抑えることを確認できた(熱傷面積が有意に減少)。しかしながら、この現象とアポトーシスが関連するかどうかは評価は非常に困難であり、アポトーシスの減少とburn wound progressionの抑制については関連を示すことはできなかった。
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