間葉系幹細胞は分泌性因子を介した抗炎症作用や血管新生作用を有することから、様々な虚血性疾患や炎症性疾患に対する再生医療の細胞源として注目されている。ところが、間葉系幹細胞には培養方法や使用法における統一された基準が存在せず、間葉系幹細胞の機能を評価するマーカーもほとんど存在しないことから、間葉系幹細胞の性質と機能性を対応づけることが喫緊の課題となっている。そこで本研究は、様々な培養条件が間葉系幹細胞の性質および組織再生能に与える影響を解析することにより、治療効果の高い間葉系幹細胞を同定することを目的とした。マウスの脂肪組織から回収した直後の間質血管細胞群(SVF)、接着培養したSVF、浮遊培養したSVF、接着培養の後に浮遊培養したSVFの4条件の細胞を準備し、それぞれの遺伝子発現を比較した。その結果、浮遊培養したSVFは、CD34やCD55などの生体内の間葉系幹細胞マーカーを高発現するとともに、軸索伸長を誘導する因子の発現量が高いことが示された。また、接着培養の後に浮遊培養したSVFは、血管新生を促進する働きを持つ成長因子の発現が高くなることなどが明らかになった。次に、これら4条件の細胞を後肢虚血モデルマウスの虚血部位に投与し、後肢病変のスコアリングと筋組織切片の解析を行った。その結果、接着培養の後に浮遊培養したSVFは、病態の進行を抑制する傾向があることがしめ筋再生が促進される傾向が認められた。
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