研究課題
悪心・嘔吐の中枢機序を解明し、新たな制吐療法を創出するためにラットを用いた動物実験を行った。ラットは嘔吐しない動物であるが、他の動物であれば嘔吐するような薬物を投与することにより、直前に摂取したサッカリンの甘味と内臓不快感(悪心)との連合学習が成立し甘味摂取を忌避する行動、すなわち条件付け味覚嫌悪(CTA:conditioned taste aversion)を獲得する。CTAの記憶は薬物誘発悪心の重症度に比例して1日から1週間続く。本研究では、吐根の成分であるエメチン、抗悪性腫瘍薬であるシスプラチン、獣医療で催吐剤として用いられるトラネキサム酸を投与してサッカリンに対する味覚条件付けを行いCTAの計測を行った。また、ラットがCTAを獲得した場合に、甘味の再摂取時に条件付け悪心誘発の有無を調べるために、味覚反応試験(TR test:Taste reactivity test)を行い、甘味の再摂摂取時のゲーピング行動の解析を行った。エメチン、シスプラチン、トラネキサム酸はいずれもCTAを惹起し、TRテストでもゲーピング行動の著しい増加を確認でき、これら全ての薬物は悪心を誘発するとともに味覚に対する嫌悪感を伴う条件付け悪心を示すことが確定できた。次に最後野切除群と迷走神経求心路切除群およびそれぞれの偽手術群を作成して同様の実験を行い、1)エメチン誘発悪心は最後野切除によってほぼ消失すること、2)シスプラチン誘発悪心は最後野および迷走神経求心路切除の両方を行ってもラットはCTA獲得すること、3)トラネキサム酸誘発悪心は最後野切除または迷走神経求心路切除によって有意に抑制されることが分かった。TRテストのデータをまとめて国際的科学雑誌へ投稿中であり、CTAのデータについても同様に発表する準備を行っている。
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Behavioural Brain Research
巻: 439 ページ: 114253~114253
10.1016/j.bbr.2022.114253