研究課題
副甲状腺ホルモン(PTH)や副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の間歇投与は、前骨芽細胞の細胞増殖と骨芽細胞の骨形成を促進する。一方、PTH受容体は、骨芽細胞系細胞のみならず、血管内皮細胞にも認められること、また、近年報告されたCD31陽性/endomucin陽性骨特異的血管は、骨芽細胞活性化・骨形成に寄与する可能性が示唆されている。これらのことから、本研究ではPTH/PTHrPの骨特異的血管に対する作用ならびに血管周囲に存在する細胞群への作用、また血管周囲の細胞群と骨特異的血管の相互作用(骨・血管連関)を明らかにすることを目的とし、2019年度はPTH間歇投与マウスの長管骨を用いた組織学的・微細構造学的解析を行った。その結果、PTH間歇投与マウスでは、endomucin陽性骨特異的血管が有意に増加するとともに、骨特異的血管の管腔径が拡大していた。また、αSMA陽性血管平滑筋を伴う血管も増加していたが、それに加えて、血管周囲の一部の細胞もαSMA陽性を示すことが明らかとなった。これらαSMA陽性細胞は、2種類の異なる組織学的特徴を有しており、1)ALP陽性を示し骨表面に近接して存在するもの、2)ALP陰性で長い細胞突起を伸ばした紡錘形の外形を示し、骨表面と平行にやや離れて局在するもの、に区別された。以上より、PTH間歇投与は、骨芽細胞のみならず骨特異的血管や血管周囲の細胞群にも影響を及ぼすものと推測され、今後、これら細胞群の相互作用などについて検討を進める予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者は、本研究課題初年度となる2019年度において、PTHが、骨芽細胞系細胞のみならず骨特異的血管増加を誘導すること、また、血管周囲の細胞群に対しても影響を及ぼすことを見出した。これらの結果は、PTHが、血管およびその周囲細胞群に作用することで、間接的に骨芽細胞系細胞に働きかける経路が存在する可能性を示唆しており、今後の解析の基盤となる重要な所見であると考えらえる。よって、本研究課題は、当初の計画以上に順調に進展していると考えられた。
PTH/PTHrPによる骨特異的血管に対する作用(骨特異的血管の血管新生、血管腔の変化、pericyte・血管平滑筋細胞などの周囲細胞の分布)や、PTHが作用した骨特異的血管が周囲の骨芽細胞系細胞/骨髄間質細胞(CAR cell、telocyteを含む)に及ぼす作用について、特に、血管とこれら細胞群による細胞間ネットワーク・コミュニケーションに注目し、透過型電子顕微鏡やFIB-SEMを用いた三次元微細構造学的解析を行う。また、骨特異的血管と骨芽細胞系細胞における骨血管連関の解明を目的として、アクチンフィラメント再構築に関わる因子(CD44、podoplaninなど)やEphB4/ephrinB2およびSemaphorin3Aなどのカップリング因子などの遺伝子・蛋白発現の変化について、real time-PCRやwestern blotting法にて解析する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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