研究課題/領域番号 |
19K10041
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山崎 英俊 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00283987)
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研究分担者 |
磯野 加奈 三重大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (10833858)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 / エナメル芽細胞 / Dspp / Amelx / 象牙芽細胞前駆細胞 / エナメル芽細胞前駆細胞 / tdTomato / GFP |
研究実績の概要 |
1)象牙芽細胞をGFPでエナメル芽細胞をtdTomatoで蛍光標識できるマウスを用いて、蛍光を指標にした機能的なエナメル芽・象牙芽前駆細胞の同定と単離(歯の器官形成を含む)を目指した。具体的には、象牙芽細胞をGFPで蛍光標識できるDspp-GFP/+ヘテロマウスの歯胚から細胞表面分子を指標に培養前はGFP陰性で培養後にGFP陽性に分化しDSPP蛋白を産生する象牙芽細胞前駆(幹)細胞を単離した。Dspp遺伝子座にGFPを挿入したDspp-GFP/GFPのホモマウスのDSPP蛋白を産生しない歯胚と正常マウス由来の細胞表面分子陽性細胞分画の歯胚細胞を混合培養し、DSPPの欠損が正常マウスのある陽性細胞分画により回復されることを明らかにした。このことは、細胞表面分子陽性細胞分画には、DSPP蛋白を産生し象牙芽細胞への分化能を持つ機能的な前駆細胞が存在することを意味する。2)歯の分化は口腔上皮の歯上皮への分化が引き金となると考えられている。そこで、胎生12日の歯上皮と口腔上皮に発現する遺伝子の違いを調べ、歯上皮の運命決定に関わる因子を明らかにする目的で胎仔歯胚からRNAを単離し、シークエンス解析を行い、歯の運命決定に関わるいくつかの候補因子を見つけた。現在、上皮特異的にこれらの因子を過剰発現できるマウスを作成する準備をしている。3)我々はTamoxifen投与にて象牙芽細胞特異的にCreを発現できるDspp-GFP-merCremerマウスを作成した。これらCre-LoxPシステムにて組織特異的に遺伝子発現を誘導あるいは欠損させることのできるマウスを用いて象牙芽細胞に発現が認められる遺伝子のいくつかに焦点を起き、それらを象牙芽細胞で特異的に欠損させることで起こる象牙芽細胞の分化や機能に関わる影響を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R2年度は、1)細胞表面マーカーと蛍光を指標にしたエナメル芽・象牙芽前駆(幹)細胞の同定と単離(歯の器官形成を含む)を計画し、細胞表面分子に対する抗体を用いて歯胚のエナメル器・歯乳頭に特異的に発現する分子を調べた。細胞表面分子に対する抗体を用いてGFP陰性で器官培養後、GFP陽性になりかつDSPPを産生する象牙芽細胞前駆細胞について同定した。しかし、tdTomato陰性で器官培養後にtdTomato陽性になるエナメル芽細胞前駆細胞の候補は見つけたものの、歯胚培養を用いて蛍光を指標にAMELXを産生し、エナメル芽細胞に分化する細胞の単離にはいたっていない。2)蛍光を指標にしたエナメル芽・象牙芽細胞の同定と単離・遺伝子解析を計画し、歯上皮と口腔上皮に発現する遺伝子の違いを調べる目的で、胎仔の凍結切片から組織を切り出し、RNAシークエンス解析を行い、口腔上皮から歯上皮を誘導するいくつかの候補遺伝子を同定した。しかしながら、それらの遺伝子の機能検索については次年度とした。3)蛍光を指標に胚性幹細胞株由来のエナメル芽・象牙芽細胞の同定と単離を目指し、Dspp-GFP; Amelx-tdTomatoの2重遺伝子組換えマウスから胚性幹細胞株を樹立した。象牙芽細胞及びエナメル芽細胞の誘導の有無を蛍光を指標に同定することを試みたが、いまだに効率的に胚性幹細胞由来の象牙芽前駆細胞やエナメル芽前駆細胞を誘導する条件の同定にはいたっていない。 以上より、研究計画がやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)蛍光を指標にした機能的なエナメル芽前駆細胞の同定と単離(歯の器官形成を含む)を目指す。これまで象牙芽細胞をGFPでエナメル芽細胞をtdTomatoで蛍光標識できるマウスを用いて、培養前は蛍光陰性で培養後に蛍光陽性になりDSPPを産生する象牙芽細胞前駆(幹)細胞を同定した。本年はAMELXを産生できる機能的なエナメル芽細胞前駆(幹)細胞を細胞表面抗体を用いて単離・同定することを目標とする。 2)歯の分化は口腔上皮の歯上皮への分化が引き金となると考えられている。胎生12日の歯上皮と口腔上皮に発現する遺伝子の違い、RNAシークエンス解析により調べ、歯上皮の運命決定に関わる可能性のある候補遺伝子をいくつか見出した。本年度は、上皮細胞特異的にこれらの候補遺伝子の発現マウスを作成し、歯数への影響や歯の分化への影響を調べる。 3)蛍光を指標に胚性幹細胞株由来のエナメル芽・象牙芽細胞の同定と単離を目指す。我々が樹立したDspp-GFP; Amelx-tdTomatoの2重遺伝子組換えマウスから樹立した胚性幹細胞株を用いて、象牙芽細胞及びエナメル芽細胞の誘導条件を検討する。引き続き困難が予想されるが、まずはGFP陽性の象牙芽細胞が誘導される条件を明らかにする。 4)Tamoxifen投与による象牙芽細胞分化関連遺伝子の同定。我々は、Tamoxifen投与にて象牙芽細胞特異的にCreを発現できるDspp-GFP-merCremerマウスを作成した。tamoxifen投与により象牙芽細胞特異的に遺伝子発現を欠損させることのできるfloxマウスを用いて象牙芽細胞分化に関わる遺伝子を同定する。現在、二つの遺伝子についてその機能を検討する予定である。
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