研究課題
本研究課題では末梢神経損傷後に損傷を受けた神経の中枢投射部位で起こるグリア細胞の活性化やニューロンの興奮性の変化が痛覚異常にどのように関与しているのかを検討している。その中でも特にグリア細胞の抑制性介在ニューロンに対する役割に注目している。昨年度までの脊髄神経系の研究結果をもとに今年度は三叉神経を用いて舌神経や下歯槽神経損傷後にカプサイシンを舌に塗布することによって三叉神経知覚核群で誘発されるc-Fosタンパクやリン酸化型ERKを分析することでニューロンの興奮性の変化を検討するとともに、c-Fosタンパクやリン酸化型ERKの誘発の相違を検討した。また三叉神経知覚核群の中の尾側亜核において下歯槽神経損傷後に収斂投射が起こり、これが尾側亜核ニューロンの興奮性の増大に関与していることが示された。さらに興奮性(VGLUT1やPSD95)および抑制性シナプスマーカー(VGATやGephyrin)の動態を検討し、抑制性シナプスマーカーのVGATが神経損傷後に損傷を受けた神経の投射部位に対応する部位でその発現が減少する傾向が明らかになった。これらの研究成果は歯科基礎医学会で発表するとともに、これまでの研究成果をもとにInternational Journal of Neuroscienceに投稿した総説が受理された。また、三叉神経系のデータは歯科基礎医学会で発表する予定であるとともにInternational Journal of Neuroscienceに論文を執筆投稿した。現在までのところグリア細胞の活性化と抑制性介在ニューロンの機能に関して明確な成果は得られていないが、今後の研究で神経損傷後の痛覚異常の発症メカニズムの解明に役立つ知見が得られることを期待する。
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Lasers med sci
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