研究課題
我々は、破骨細胞の骨吸収機能を促進するWnt非古典経路について解析し、そのシグナル経路の下流で、重要な役割を果たすセリン/スレオニンキナーゼである、プロテインキナーゼN3(PKN3)を見出した。このキナーゼを阻害することで、破骨細胞の数を減らすことなく機能を抑制することが可能となる。2019年度の研究で、PKN3阻害活性が報告されているいくつかの化合物について検討し、SB202190が破骨細胞への分化を抑制しない濃度で、骨吸収活性を抑制することを見出した。2020年度においては、SB202190の作用をin vitroでより詳細に検討するため、濃度依存性について調べた。SB202190は、破骨細胞の骨吸収機能に必須のアクチンリングの形成を濃度依存的に抑制し、そのIC50は、0.085 microMであった。SB202190は、高濃度では、破骨細胞分化も抑制するが、そのIC50は、1.41 microMであり、機能抑制に必要な濃度より10倍以上高かった。また、in vivoにおいて、閉経後骨粗鬆症のモデルである卵巣切除を施したマウスに、SB202190を投与すると、骨量減少を抑制することが明らかとなった。この時、骨形成に対して、抑制効果は示さなかった。このことは、PKN3欠損マウスで骨形成に影響が見られないことと一致する。RT-PCR法により、骨芽細胞におけるPkn3の発現レベルは非常に低いことが明らかとなった。これらの結果は、PKN3阻害が骨形成に悪影響を及ぼすことなく骨吸収を抑える、骨粗鬆症治療薬になりうる可能性を示唆する。
3: やや遅れている
PKN3と相互作用するタンパク質の網羅的解析が進んでいないが、本年度中に進められると考えている。
破骨細胞においてPKN3と相互作用するタンパク質を網羅的に解析するため、タグ付きPKN3の発現条件の検討を進める。
新型コロナウイルス感染症の流行のため、参加予定であった学会への参加を取りやめたり、また、参加した学会もオンライン開催になったため、旅費として計上していた金額を使用せずに済んだため。タグ付きPKN3の新しいコンストラクトの作成を行うためのキットの購入と作成したアデノウイルスベクターの精製キットの購入に充当する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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