研究課題
骨粗鬆症は、我が国に1000万人の患者がいると推計されている疾患であり、様々な原因により骨吸収が骨形成を上回ることで進行する。現在までに市販されている骨吸収抑制薬は、骨吸収を担う破骨細胞の数を極端に減らしてしまうため、骨共役の破綻による骨形成の低下を招く。そのため、破骨細胞の数を減らすことなく、その機能のみを阻害する薬剤の開発が求められている。我々は、サイトカインWnt5aが、破骨細胞に発現する受容体Ror2を介して細胞骨格を制御する分子メカニズムについて研究し、プロテインキナーゼN3(Pkn3)というセリン/スレオニンキナーゼが重要な役割を果たすことを既に報告している(Uehara et al. Sci. Signal. 2017).本研究課題において、Pkn3に対する阻害活性が報告されている複数の化合物について、骨吸収に対する効果をin vitroにおいて検討したところ、SB202190が、破骨細胞の分化や生存に影響を与えない低濃度で骨吸収活性を抑制することを見出した(IC50=0.085 microM)。また、in vitroにおける骨芽細胞の石灰化能には影響を与えなかった。破骨細胞前駆細胞及び骨芽細胞には、Pkn3がほとんど発現していないためだと考えられる。この試薬を閉経後骨粗鬆症のモデルマウスである卵巣摘出マウス(OVXマウス)に投与したところ、骨形成を阻害することなく骨吸収を抑制することで、海綿骨量の減少を抑制することが明らかになった。これらの成果を論文としてまとめ、最終年度に受理された(Uehara et al. J. Bone Miner. Res. 2022)。
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J Bone Miner Metab .
巻: 40 ページ: 251-261
10.1007/s00774-021-01296-1.
Bone.
巻: Epub 2021 Oct 27. ページ: -
10.1016/j.bone.2021.116241.
J Bone Miner Metab.
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10.1007/s00774-020-01162-6.