研究課題
本研究課題では、生活習慣病胎児期起源説(DOHaD: Developmental Origins of Health and Disease)に基づき、妊娠母体のOne carbon metabolism関連栄養素の摂取状況が、次世代の発癌感受性に影響することの分子基盤の解明を行なっている。昨年度までに、妊娠母体の葉酸欠乏が、胎児の脱ユビキチン化酵素遺伝子にメチル化異常を引き起こし、当該遺伝子の発現異常をきたすこと、さらに仔が成熟した後も当該遺伝子の発現異常は持続しており、炎症誘発への感受性が高めることに寄与していること、また、その傾向が扁平上皮組織に特に顕著であることを示唆するデータを得た。母体の解析については、最終的に仔の解析結果と統合的考察を行うため、栄養状態についての血清学的検査(葉酸、総ホモシステイン、アミノ酸)を行い、データを蓄積した。上記の結果に基づき、今年度は、産仔に対する発癌実験(口腔癌、皮膚癌)を行い、妊娠母体の葉酸欠乏が、子孫の発癌感受性を上昇させることを明らかにした。また、そのメカニズムとして、脱ユビキチン化酵素のエピゲノム異常の可能性を裏付けるデータを得た。
3: やや遅れている
研究代表者が、2021.3.1付で、九州大学に異動した。新しい所属機関における動物実験の申請許可が承認されるのに時間がかかったため、進捗がやや遅れた。
今後も引き続き、産仔に対する発癌実験を行い、仔の発癌リスクに母体の影響が反映されている可能性を検証する。また、この発癌感受性が、後天的なDNAメチル基転移酵素阻害剤によって抑制できるか検討を行う。また、in vitroの細胞培養実験において、同定している脱ユビキチン化酵素が、扁平上皮における発がんのみならず、がんの進展(増殖、浸潤)においても重要な役割を果たしているかどうか、検討する。
2020.3.1付での研究代表者の所属研究機関の異動、また、同時にCOVID-19の影響も重なり、本研究課題の主軸の動物実験の倫理承認が得られるまでに時間を要したため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
J Biol Chem
巻: 296 ページ: 285-296
10.1016/j.jbc.2021.100274.
Adv Biol Regul
巻: 78 ページ: 100752
10.1016/j.jbior.2020.100752.