研究課題
本研究課題では、生活習慣病胎児期起源説(DOHaD: Developmental Origins of Health and Disease)に基づき、妊娠母体のOne carbon metabolism関連栄養 素の摂取状況が、次世代の発癌感受性に影響することの分子基盤の解明を行なってきた。 昨年度までに、妊娠母体の葉酸欠乏が、胎児の脱ユビキチン化酵素遺伝子にメチル化異常を引き起こし、当該遺伝子の発現 異常をきたすこと、さらに仔が成熟した後も当該遺伝子の発現異常は持続しており、炎症誘発への感受性が高めることに寄与していること、また、その傾向が扁 平上皮組織に特に顕著であることを示唆するデータを得た。今年度は、母体と仔において、栄養状態についての血清学的検査(葉酸、総ホモシステイン、アミノ酸)を行い、統合的考察を行った。 また、産仔に対する発癌実験(口腔癌、皮膚癌)を行い、妊娠母体の葉酸欠乏が、子孫の発癌感受性を上昇させることを明らかにした。さらに、そのメカニズムとして、脱ユビキチン化酵素であるCyldのエピゲノム(DNAメチル化)異常が証明された。このことは、母体の葉酸欠乏が仔に炎症制御異常を生 じさせている可能性を示唆しており、炎症が先行する癌の発症抑制には、胎内での適切な葉 酸曝露が必須であることが示唆された。近年のエピゲノム研究により、遺伝子発現レベルのエピジェネティックな制御異常は、 ヒトとマウスでほぼ同様であることが分かってきていることから、本研究で証明される分子基盤について、ヒトでも同様の結果が得られる可能性は十分考えられ、将来、本研究を基盤とした臨床研究へ発展する可能性を秘めている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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