研究課題/領域番号 |
19K10053
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10432650)
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研究分担者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20112063)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90221936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CD302 / osteoclast / osteoblast / chondrocyte |
研究実績の概要 |
まず、軟骨細胞でのCD302の存在について明らかにするため、ヒト軟骨細胞様細胞株であるHCS-2/8細胞を用いた検討を行った。HCS-2/8細胞のtotal RNAおよびタンパク質を回収し、real time PCRおよびウエスタン・ブロッティング法で解析したところ、CD302のmRNA発現およびタンパク質の存在が認められた。次に、軟骨細胞におけるCD302の発現制御因子を解明するために以下の実験を行った。CCN2 (cellular communication network factor 2)は軟骨細胞の増殖および遺伝子およびタンパク質発現であるが、この因子によるCD302発現への影響を解明するためCCN2をHCS-2/8細胞に強制発現させた時のCD302のタンパク質量を解析したところ、対照群とほとんど差が見られなかった。このことから少なくとも軟骨細胞においてはCCN2によってCD302のタンパク質量に影響を及ぼすことはない可能性が高いと考えられる。さらに、軟骨細胞の培養条件による違いがCD302の発現に及ぼす影響を調べたところ、密な状態で培養した時の細胞では粗な状態の時に比べて二倍近くのCD302を発現していた。 ここでさらに骨形成細胞である骨芽細胞におけるCD302の発現についてもさらに解析を進めた。マウス骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞におけるCD302の発現確認と培養状態が及ぼす影響を調べたところ、この細胞においてもCD302が発現しており、軟骨細胞様細胞株の場合と同様に密な状態の時の方がCD302の発現量が高くなっていることが分かった。 これらの結果はCD302を発現させた時に細胞形態が対照群と比べて丸くなっていたこととも併せて、細胞間接触の増減に伴う細胞骨格の変化とCD302発現との間に何らかの関連性があることが推察できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで破骨細胞におけるCD302の発現を明らかにしてきたが、それに加えて軟骨細胞および骨芽細胞におけるCD302の発現とその増減に細胞間接触が関与している可能性について明らかにすることができた。これらの結果は研究計画調書に記載した課題④および③の一部を実行したことによる。これらのことから概ね当初の計画通り進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおりCCN2をHCS-2/8細胞に強制発現させた時のCD302のタンパク質量は対照群とほとんど差が見られなかった。ただし、一般的に軟骨細胞はCCN2をある程度すでに発現しているため差が見られにくかった可能性もあり、CCN2の発現を抑制する系を用いて改めてこの点を確認する必要がある。CD302のシグナル伝達に関してはSHP-2およびSykのシグナル系が関与していることを示唆する予備データがあることから抗SHP-2抗体を用いた免疫沈降物にCD302およびSykが含まれていることを示すため免疫沈降ーウエスタンブロッティング法を行ったが、サンプルの量が不十分だったため、明確な結果が得られなかった。引き続きサンプル量を増加させて解析を行う予定である。 さらにCD302の機能発現とアクチンとの関連について解析するため、アクチンの重合阻害剤や促進剤を用いて細胞骨格とCD302の発現および機能との関連について明らかにするための検討を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
軟骨組織および骨組織におけるCD302の発現分布について解析するための実験動物購入を予定していたが、予備検討に手間取ったため次年度使用額が生じた。当該予算は、次年度、動物購入および飼育等費用として使用する予定である
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